「北の山・じろう」日記

内容は主に時事問題。時々株式投資関係の記事も交じります。

ハルキウ州クピャンスク戦線の戦闘<ウクライナ紛争2024.05.28

2024-05-29 19:25:49 | 中立の視点で見るウクライナ紛争

2024.05.27
ロシア軍がチャシブ・ヤール東地区の南郊外に侵入、イワニフカ占領の可能性
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/russian-troops-invade-the-southern-outskirts-of-the-eastern-part-of-chassib-yar-possibly-occupying-ivanivka/

ハルキウ北部戦線でのロシア軍の攻撃開始と併せてロシア軍が活発に攻撃を始めたのが、クピャンスク戦線です。
去年はオスキル川Oskil River東の北側の方で激戦が続いていたと思います。
直接クピャンスク市街に迫る狙いがあったと思います。

今年になってロシア軍の攻撃方向が変わりました。
2月3月ごろは、ルートP-07を南東方向に下ったキスリブカKyslivkaとコトリャリフカKotlyarivkaを攻撃していました。
これがこの地域のウクライナ軍の強力な要塞だったようで攻めあぐねていました。やっと攻略できたのが4月になってからではないか・と思います。

航空万能論の記事にある戦況略図を見ると分かりますが、この拠点から南方向の南北に広い前線のほぼ全域でロシア軍の攻撃が始まったようです。
一時的な目的は占領地を西のオスキル川Oskil Riverまで押し広げることだと思います。
略図を見ても西方向にウクライナ軍の拠点らしき集落は、川沿いにしかありません。

2月ごろにロシア軍は4万人規模の部隊と戦車を含む1000両の戦闘車両を集結していました。
だから春の大攻勢は、クピャンスク市街ではないか・との見込みもありました。
その後、チャシブ・ヤールを激しく攻撃しここが春の大攻勢の目標であろうと思わせました。(今、ゆっくり攻めています)

このような陽動作戦を展開して、奇襲攻撃で一気に攻め落としたのがアウデイーイウカ戦線のオチェレティネOcheretyneです。ここの制圧を起点にアウデイーイウカ戦線では、かなり広い面積を短期間に攻略し、今も占領地を拡大中です。

その後、ハルキウ北部作戦が発動されました。
しかしハルキウ北部にいるロシア軍は、5万人程度と推測されています。だから、まだ来ないだろうとウクライナ軍は考えていたと思います。裏を掻かれてロシア軍が進撃を開始して、まだウクライナ軍はロシア軍を追い払えず長期化の様相が見え始めました。

まだ、はっきりとは分かりませんが、ロシア軍の攻撃の範囲の広さを見ると、どうやら本命の攻撃はキスリブカKyslivkaの南の広い地域のようです。
もし2月に近くに集結していたロシア軍がそのままいるなら、これは簡単に実行できるしロシア軍の進撃は早いと思います。

あちこちで陽動作戦を繰り返し、ウクライナ軍を分散させて本当の攻撃目標を攻撃するのが、今年のロシア軍の手口です。
ロシア軍が賢いとも言えますし、兵力不足のウクライナ軍は、どうしようもない・とも言えます。

丁度2022年、目いっぱい占領地を広げて補給が追い付かなくなり兵力も少なくなり防御も出来なくなったロシア軍が、一気にウクライナ軍の反撃作戦を受けた時に似ています。

ロシア軍は態勢を立て直すためにかなり広い地域を放棄して撤退しました。ハルキウ州からは、遁走しているように見えましたが兵力の温存を優先して、ひたすらロシア軍は逃げました。
そこで兵力を温存して後方で兵士の密度を高くしたからロシア軍は、一定の占領地を守ることに成功したと言えます。

今、ウクライナ軍は反対の立場にいます。
少ない兵力で広い戦域を全部、守ろうとするから各個撃破されています。兵力が少なければ、これはどんな名将軍が指揮しようと結果は同じです。

大きく後方まで防衛ラインを下げて、ウクライナ兵の密度を高めて陣地を利用して防衛戦を戦うしかありません。
これとて守るだけの方法です。

その間に和平交渉を始めるしかありません。

大きくロシア軍が前進した地域だけ取り上げていますが、どの戦場でもゆっくりとロシア軍が前進しています。
大きな面的な防衛ラインが崩壊し、ロシア軍がその内側に侵入してしまったのが、アウデイーイウカ戦線です。
他の前線にもそれが、やがて波及します。
これまでの大きな面的な防衛ラインでの防衛は、もう不可能だとウクライナ軍の参謀本部とゼレンスキーが認識して対応しないと、ウクライナ軍は武器・兵員とも減少し続け領土は、ロシア軍が侵食し続けます。

ロシア側から停戦条件が提示されました。
ロシア軍もそれに合わせて作戦を変更していると思います。仮に停戦交渉が始まるとしたら、その時点で占領している面積が多いに越したことはありません。
クピャンスク戦線でのロシア軍の行動を見ると広い面積を確保しようという意図も見られます。
激戦の方を避けて面積の広い方を先に攻撃しています。

いよいよ仕上げの刈り取りに入ったのかもしれません。
ドネツク州の全域とハルキウ州の北側と東側のロシア領と隣接する地域は、優先的な占領目標でしょうね。

※クピャンスク方面のロシア軍の進撃スピード
2024.05.25
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/russian-troops-advance-towards-berestve-in-the-direction-of-kupyansk-which-commander-in-chief-shirsky-mentioned-as-difficult/
2024.05.27
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/russian-troops-invade-the-southern-outskirts-of-the-eastern-part-of-chassib-yar-possibly-occupying-ivanivka/
両方の記事の略図を見るとロシア軍のイワニフカIvanivkaへの進撃の速さが分かります。たった2日で到達し集落の攻略に取り掛かっています。この付近のウクライナ軍の防衛がほぼ機能していません。


※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次⑤
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27

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ロシア軍の特別軍事作戦の司令官は誰か❓<ウクライナ紛争2024.05.28

2024-05-29 19:24:15 | 中立の視点で見るウクライナ紛争

2023年のどの時点かからロシア軍には、大きな変化が見られます。
例えば、2023年1月~3月ごろはロシア軍は支離滅裂な攻撃をしていました。ほぼ全体的な計画がなく、各部隊が勝手に軍事行動しているように見えました。無駄な攻撃と大きな損害で、愚かで弱いロシア軍そのものでした。
ロシア国内からも余りの間抜けぶりに非難ごうごうでした。

振り返って考えてみると多分3月ごろに変化があったのであろうと思います。
アウデイーイウカ攻略作戦が始まったのが、このころです。
攻防が激しくなったのは秋ですが、実際には3月ごろから作戦は始まっていました。
詳細は、省略。

その後、ロシア軍の行動には全体としての整合性が見られます。それ以前のロシア軍のバラバラな行動とは明らかに違います。
誰かが特別軍事作戦の指揮を執り始めたから、こう変化したと思います。それは誰か❓
分かりませんが、一応ロシア軍の人事を見てみます。

『ウクライナ侵攻の総司令官に異例の軍制服組トップを任命 ゲラシモフ参謀総長が直接指揮 「背水の陣」か』 
2023年1月12日 19時01分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/224919

この記事では、スロビキン大将に功績がなかったとしています。
しかし2022年敗勢に近いロシア軍を立て直し、スロビキン・ラインを建設し、今も続く「南は守り、東を攻める」と言うロシア軍の基本計画を決めたのは、スロビキン大将であり功績は大きいと言えます。
2022年10月に総司令官に任命されたスロビキン大将が2023年1月に副司令官に降格したのは、ロシア軍内部の権力闘争によります。

当時ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長を批判しまくっていたのが、ワグネルのプリゴジン&カディロフです。ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長の追い落としを図りました。
プリゴジン&カディロフが支持していたのがスロビキン大将です。その影響力を弱めるためにスロビキン大将は降格させられたと言えます。

その後も両者の権力闘争は続きますが、最終的にプーチン氏の支持を得たショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長が勝利し、ワグネルの解体が決まったのが5月ごろです。

それは脇に置いて・・・

ハルキウ州からの撤退を決めたためロシア軍は、大きく占領地を失いました。今、考えると撤退しなければ兵士の損傷は甚大になっていたと思われます。それを回避するために撤退を決定したのが、当時・中央軍管区司令官のラピン上級大将であったようです。撤退の責任を問われ2022年10月に中央軍管区司令官から更迭されます。
これをプリゴジン&カディロフは批判したようです。

しかし、記事によるとラピン上級大将は国防省内の評価は高く、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長の派閥に属する主流派です。
その能力を評価するゲラシモフ参謀総長は、特別軍事作戦の総司令官に就任するときにラピン上級大将を陸軍参謀長に任命します。

おそらく降格した副司令官のスロビキン大将は徐々に権限を剝奪され、代わりに実質的に特別軍事作戦の指揮を執るようになったのが陸軍参謀長のラピン上級大将ではないか・と推測できます。

ゲラシモフ参謀総長が特別軍事作戦の指揮を執るのは事務量の膨大さを考えると到底無理です。
だから内部では陸軍参謀長のラピン上級大将が代行を務めているのではないか・と思います。

そうすると2023年3月ごろからロシア軍の指揮命令系統が明確になり全体としての整合性が取れた理由が分かります。
ゲラシモフ参謀総長の秘蔵っ子と言うことでしょうね❓
『※ただし、これは私の推測でありそう書いた記事はありません。』
まだ名目上は、特別軍事作戦の総司令官はゲラシモフ参謀総長のままだと思います。


※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次⑤
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27

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(経済)フランスの上がり目とドイツの下がり目、イギリスの落ち目、日本は❓<2024.05.29

2024-05-29 19:23:07 | ヨーロッパ

アングル:ドイツ不動産市場、外国人が敬遠 経済の傷深まる恐れ
By Tom Sims、 John O'Donnell
2024年5月24日午後 4:21 GMT+91日前更新
https://jp.reuters.com/markets/japan/CFWSI34WHNPDVMDKDP52TIMAAI-2024-05-24/
アングル:企業投資はドイツからフランスへ、マクロン氏の改革が成果
By Leigh Thomas
2024年5月25日午前 8:07 GMT+919時間前更新
https://jp.reuters.com/markets/bonds/HEE33X7ZFVMTLODIXYBOTUJNAE-2024-05-24/
アングル:EU市民の生活水準低下、議会選で極右伸長のパワー溜まる
By Michel Rose、 Maria Martinez、 Mark John
2024年5月11日午後 3:12 GMT+915時間前更新
https://jp.reuters.com/world/europe/FUWS7TA3PNM27LYJTZTPLDEQZA-2024-05-11/

ドイツの今年のGDP成長率予想を昨秋時点の0.7%から0.2%に下方修正されました。
「ドイツの経済モデルには疑問の声が投げかけられている。」
エネルギーコストの高騰
世界的な需要低迷
破壊的なネットゼロ経済へのシフト
中国との競争激化など

「ドイツの経済成長モデル」の失敗
中国向け輸出
安価なロシア産天然ガスに依存し過ぎた
インフラの老朽化や電力価格の高騰
緊縮財政など

「不動産市況の低迷の理由」
分散型の都市設計を進めた。
単一の巨大都市が存在せず、ロンドンやパリといった真のグローバル都市を
ターゲットにする傾向がある外国人から敬遠されることが少なくない
ドイツの不動産所有者は不動産価格を下げずに不況を乗り切ろうとする

<大体、こんな事情がドイツ経済の足を引っ張っているようです。>

一方、フランス

原子力エネルギーを長期的に推進してきた経緯
(安定した安価な電力供給)
法人所得税率を25%に引き下げる
(ドイツの平均的な法人税率は30%弱)
労働市場改革も推進
労働裁判所向けの雇用主拠出金負担を抑え、週35時間労働制をより柔軟に運用することを企業に認めるなど

良好なインフラや技能を備えた労働力
税負担軽減

※イギリス
EU離脱によりメリットが失われて、文句なしのド壺!
(イギリスに投資するメリットが、なくなった)

このような各国の事情を背景にフランスへの投資が近年増えているのだそうです。
「フランス中銀、2024年のGDP成長率を0.9%と予測」
2023年12月25日
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/12/e04bf1539342c041.html
それほど良好とも言えませんが、ドイツよりはマシと言うことのようです。

で、評価
「ハーガー氏は、外国投資がフランスに大きく流入しているとしても、同国の工業セクターがドイツに追いつくまでの道のりはなお非常に長い、と話している。」

目先の成長率の話で、製造業でフランスがドイツに追いつくには、程遠い状況のようです。

ドイツの失敗は、極端にエネルギーをロシアに依存したことです。脱原発宗教に取付かれたドイツは、原発を全部廃止しました。その電力を補ったのは、ロシア産の格安の天然ガスです。
これが輸入できなくなり、かなり割高のアメリカとノルウエーの液化天然ガスに切り替えるしかありませんでした。

フランスは原発政策を維持してきたので2022年で85%超が原子力発電です。安定して格安の電力を供給できます。
この電気代の差は、国全体に及びますから大きいと思います。
日本の電力政策でも考えて欲しい部分です。

※そして違う角度から見てみます。
https://www.iti.or.jp/kikan77/77echo.pdf

「ドイツの名目GDP(2019年) を需要項目別にみると、輸出(財・サービス)は46.8%と大きなシェアを占めている(図6)。」
2004 年から 08 年までの輸出先
EU諸国62%~63%
BRICs向け
4年間で87.6%増加
シェアでも 5.9%から 8.2%と拡大

「好況のときは平均以上に利益が出るが、不況のときは打撃が特に大きい」

ウクライナ紛争の影響でEU各国は、どちらかと言うと不況に近い経済状況だと思います。
大きな比率を占めるEU諸国向け輸出は、減少していると思います。
更には伸び率が大きく稼ぎ頭であったBRICs向けは激減していると思います。

加えて中国製品が世界中でドイツ製品を駆逐しつつあります。

つまり❓
ドイツ経済不振の原因は・・・
①エネルギーコストの上昇
②輸出依存型経済が、輸出減で縮小した
主にこの2点だと思います。

日本が得られる教訓は・・・
一定の価格でのエネルギーの安定供給
輸出と内需のバランスの良い経済構成
(過度に輸出に依存しない)
日本の輸出比率はわずか18%で内需中心の経済です。
輸出振興より内需拡大を図るべきでしょう。
日本経済が比較的無事な理由は、ウクライナ紛争やガザ紛争の影響をヨーロッパほど受けない。
内需比率が高いので外国の景気動向に左右されにくい点だと思います。

急激に良くならない代わりに、急激に悪くもならないと言うことのようです。
だから外国では高インフレが社会問題になっていますが、日本では比較的インフレが抑えられているのも、これが理由です。
イギリスなど前年同月比10%程度のインフレが続きました。アメリカでも8%を超える時期がありました。
そういった意味で何かと馬鹿にされる日本政府ですが、国民生活の安定と言う意味では、多分世界で一番成功していると思います。

こう書くと、何が良くて何が悪いか❓
良く分かりませんね❓

「他人の芝生は青く見える」

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