順位戦10回戦対神谷七段戦。

2007-03-10 | 対局

順位1枚も関係ない消化試合を指すのは初めて。こういう将棋こそ大事に指さなくてはいけないとは良く言われますが自分の性格では難しいかなとも思っていました。

案の定、いつもは読みにない手を指されると汗が吹き出るのですが今日は「あぁ、そんな手もあるのか」と思う程度。これではいけませんね反省の意味も込めて振り返ります。

先手番で▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲7八金△5四歩からの出だし。ゴキゲン中飛車対▲7八金型になりました。

             

ここではうまくいったと思っていました。▲3六飛△4五歩▲3五銀△6四角▲3七桂で十分なのはわかっていたのですが欲張って▲3七桂。すかさず△4五歩▲同銀△1三角とされて作戦勝ちが吹っ飛びました

             

桂損ですが△3二金が遊んでいるので良い勝負。図から△6九銀▲7九銀△7八銀成▲同銀△1四香。▲7九銀は▲6八金寄を見せて△7八銀成を催促した手ですが、金をはがされて自信のない展開。この後、受ける必要がないところを受けてしまい形勢を損ねました。

             

▲2九香に対して△7四桂→△6六歩→△5六歩と攻められた局面。▲2九香が虚しい駒になっていてこれが自分の将棋かと思うと情けなくなりました。図以下▲2四香△5七歩成▲6九金△6七歩成▲9五歩と端を攻めましたが形勢は不利。

                  

▲9三銀と打ってしまうと駒が足りないので▲9三歩成。取られて詰まないことは読み切っていましたが、これしか勝つ可能性がないのでピシッと指して自信ありげに背筋を伸ばして相手の指し手を待ちました。

▲9三歩成に△同香と取ると▲同香成△同桂▲同角成△同玉▲7一角△同金までは一本道。▲7一角ではなくて▲8五桂は△8二玉▲9三角△9二玉で金がないので詰みません。

                 

ここで▲8五桂と王手するのは△9四玉▲8六桂△9五玉▲9六歩△同玉▲9七香△8五玉▲9六銀△9四玉▲9五銀△9三玉▲9四銀△同飛▲同香△8四玉(参考2図)で詰みません。

                 

参考1図に戻って▲9六香と打ち△9五歩の中合いに▲8五桂と打つ筋もあります。それには△8四玉▲7五銀△8五玉▲8六銀打△9六玉(参考3図)で打ち歩詰め。

             

参考2図の変化は「▲8五桂に△9四玉」

参考3図の変化は「▲9六香△9五歩▲8五桂に△8四玉(今度△9四玉は詰み)」

神谷七段は参考2図の「△9四玉で不詰め」を読んだ後だったので△8四玉が盲点になってしまったそうです。

他に参考1図で▲9四歩と王手する筋も際どいのですが詰みません。▲9三歩成を取られていたら負けでした。

実戦は▲9三歩成に△7一玉だったので▲5五歩

             

が詰めろ逃れの詰めろ。以下も難解でしたがここで流れが変わったようで最後は勝ち。終局は21時36分でした。

相手の時間切迫に助けられた格好で申し訳ない勝ち方でした。今回のような消化試合は生涯で何度もありませんが、今度指すことがあればもう少しマシな将棋を指したいと思います。

少し喉が痛いような気がしたので感想戦終了後すぐに帰宅。

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コメント
 
 
 
お見事!! (-den)
2007-03-10 10:14:53
中継の更新をやきもきしながら、見ていました。
全勝昇級おめでとうございます。
いい春になりました。

喉、ご自愛ください。
 
 
 
順位戦最終局 (Romeoo)
2007-03-10 10:52:47
 順位戦最終局というのはやはり棋士にとって重いものなのですね。失礼ながら昨年度の最終局の風景を思い出しながら拝見していました。竜王位3連覇の大竜王をもってしても順位戦最終局は一筋縄ではいかないのですね。
 ぜひ再来年はBS中継でその雄姿を我々に見せてくれることを期待しております。
 
 
 
▲9三歩成以下 (K.O)
2007-03-10 10:58:00
解説の中に▲9三歩成を取られていたら負けだったとありましたが、勝ち筋もあるようですよ。
▲9三歩成△同香▲同香成△同桂▲同角成△同玉の後▲9六香と打つ。以下△9五歩▲8五桂△8二玉▲9三角△9二玉▲6六角成で必死。▲9三角に△8一玉や△9一玉でも▲8二銀以下一緒ですね。
 
 
 
消化試合について (Logical Space)
2007-03-10 10:58:10
王位リーグで、神谷七段と勝負すると思いますので、王位リーグでは、必ず勝って欲しいです。
今回は、消化試合なので、純粋に指していて楽しい将棋を心がければ良いのではないのでしょうか?
消化試合なのだから、普段、疑問に思っている戦法を試すのも良いかも知れませんね。
全勝、おめでとうございます。
 
 
 
失礼しました (K.O)
2007-03-10 11:18:05
先程のコメント間違えました。
▲6六角成の瞬間△7八とで先手玉が詰みますね。
持ち駒を誤っておりました。(7九に銀があると思っていた)
大変失礼しました。
 
 
 
でも、難しい詰みですね。 (Logical Space)
2007-03-10 11:50:46
K.Oさんへ
▲6六角成の時、△7八とで確かに、詰みますね。
でも、難しい(長い)詰みですね。
<例>
▲6六角成、△7八と、▲同玉、△9八飛、▲8八馬、△6八金、▲7七玉、△5七飛成、▲8六玉、△9六飛成、▲7五玉、△7四銀までの詰みですね。

▲8八馬、▲7七玉の時に、変化があるので相当、読まないと分りませんね。

K.Oさんは、やっぱり有段者ですね。

あまり、深く読んでいないので良く分りませんが、▲9六香でなくて、▲9九香では、また、別の変化になりそうですね。△9八飛の筋がないためです。

プロは、このような水面下の変化を読んでいることを考えていると頭が痛くなります。
 
 
 
感謝解説 (観戦棋士)
2007-03-10 12:00:27
神谷戦解説感謝・感謝(2回)
ヘボなりに凄いなーと思いました。竜王は今勢いがあるのでしょうね。神谷七段は勢いに押されてたじたじとなったから?
93歩成、取るや取らざるや。じっと見つめて考えたら何分で頭が痛くなるか、これから自己試験です。
 
 
 
勝運を大切に! (隠居のたわごと)
2007-03-10 12:48:01
順位には関係なくても、順位戦全勝は価値があります。
よかった、よかった!
王位戦での再戦の時は、欲張りすぎず、丁寧に丁寧に。
それにしても、「ピシッと指して自信ありげに背筋を伸ばして」の姿は映像で見たかったですネ。こういう楽しい解説があるのだから、これからの渡辺竜王のテレビ戦は、いつでも見直せるよう、すべて録画しておくことにします。
 
 
 
作品を (初心者)
2007-03-10 13:53:05
私は、そもそも「消化試合」という言葉を使ってほしくなかったです。でも、こういう状況の場合、プロ棋士ならば皆さんが、「消化試合」というのでしょうか?

谷川九段は「対局料は棋譜に対して払われている」と14歳の時に気づいたそうですが、「棋譜」という「作品」をつくる場には、「消化試合」などはないのではないでしょうか。
 
 
 
うーん、分からない (K.O)
2007-03-10 14:43:29
最終局面から△同飛▲5五歩(詰めろ逃れの詰めろ)に△6二金と受けられたら、▲5三角成の詰めろ逃れの詰めろには△同金がまたまた詰めろ逃れの詰めろ。その後どうやって先手が勝つんだろう?
有力な手は、▲9一飛△8一香▲5一飛△6一歩▲5三飛成△8五歩▲7五玉△3九角▲6四玉△3一角(詰めろ逃れの詰めろ)に▲8二銀以下先手の勝ちかな?
しかし、△6二金の代わりに△5二歩や△4二金と受ける手もありそうだし、まだまだ難しい局面だと思いますが・・・。

神谷七段が投げたのが分かりません。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2007-03-10 16:56:22
初心者さんがおっしゃることもごもっともと思います。
でも、そういう本音?が聞けるのも個人ブログのいいところでもありますし。微妙なところですね。

対局料は棋譜に対して払われる、ということを竜王が意識してないはずもないと思いますし。。。
 
 
 
さあ、来期はB級1組だ (ssay)
2007-03-10 18:06:04
と金が2枚並んだ局面では、ボロ負けかと思いましたが。コメント欄にも、「高野五段は神谷勝ちを断言」とか、▲9三歩成に対して「逃げると紛れが生じるが、取れば明快。」とかあったので、こりゃダメだと思いましたが、なんと、神谷七段7一玉と逃げたではないですか!これで、事件発生。
しかし、▲9三歩成と▲5四歩はセットなのですね。これで、負けを覚悟しつつ、逆転を狙っていたなんて!勝負術は素晴らしいです。しかーし。
と、この後、対局時のモチベーションについて書いたのですが、短い文だとかえって誤解されると思いましたので、削除しました(笑)。
しかし、正直に心境を語っていますよね。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2007-03-10 18:15:15
本当にどうでもいい試合と思ってるならここまで細かく解説してくれてないし、「力を抜いてると思われないようにがんばってきます」と前日にも書いている。

順位を争う戦いにはどうしても「消化試合」という名称の試合ができてしまうだけのこと。

正直言葉尻を意地悪く捉えているように見えます。
 
 
 
消化試合? (振られ飛車)
2007-03-10 19:18:36
「勝負に勝って、将棋に負けた」というのはこういう対局なんですね。やはりどこかに心のゆるみがあったのでしょうか。
こういうものを忘れてしまいたいと思うか、肝に銘じると考えるか、どちらでもよいと思います。

どうせなら、日頃指さない戦法を指してみたらどうだったでしょうか。原始中飛車、カニカニ銀、地下鉄飛車、風車なんていかがですか。
 
 
 
Unknown (駒落ち好き)
2007-03-10 19:41:33
見事に足下をすくわれたかと思いましたが、
神谷七段は盲点とはいえ震えてしまったようですね。
最後のお願いを隠して自信ありげに姿勢を正してぴしっと指す竜王の勝負術は、この解説で心境を知ったあとですのでさすがを通り越して思わず笑ってしまいました(笑)
正直にぶっちゃけますねー
そこが竜王の魅力なんですけど
ご自身でもよくわかってらっしゃるようなので
これも経験ですね
しかしながら3七桂は技を掛けてくださいという手でしたね(笑)
終盤、ボナンザなら冷静に同香と取りますね(笑)
ちなみに参考1図から9四歩が一番受け間違えそうですね
私は詰みました(笑)
 
 
 
勝利おめでとうございます! (しゅういち)
2007-03-11 03:17:26
モチベーションが上がる対局と上がりにくい対局というのはあるのではないかと思います。
コンディションの良し悪しもあるでしょうし、常に最高の状態で臨めるわけでもないでしょう。
その中でも最善を尽くすことが渡辺竜王ご自身にとっても相手の方にとっても一番なのではないかと思います。
全勝昇級おめでとうございました。
 
 
 
本音大好き (みー)
2007-03-11 21:25:21
このブログの最大の価値は、棋界の第一人者が、建前でなく、本音をファンにさらけ出してくれている(もちろん全部ではないでしょうが)ことだと思います。
「え、こんなこと言ってしまっていいの?」という表現があって、でも、ベストを尽くして、そして、結果も出す、というところに明竜王の魅力があるのだと思っています(私にとっては)。
あまり建前に立った「正論」ばかりだと味気なくなりそうで...
 
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