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「雨族」
断片46-園の内側、赤い空
2.去年マリエンバートで
私は奇妙な夢から目覚めると、とにかく立ち上がり、VTRデッキのスウィッチを入れて、テープを再生し、夢を思い出そうとした。
私はカーテンを開け、ウェットスーツのまま、インスタントコーヒーにミルクをたっぷりと入れて、カフェ・オ・レを作り、白い丸テーブルに座り、ぼんやりとキャメルマイルドをくゆらせて、夢の事を考えた。
VTRデッキはアラン・レネの「去年マリエンバートで」を再生していた。
しばらくして私は夢の中の出来事を思い出そうとする努力をうち切った。
何も思い出せなかった。
ただ、何か、背中に蝋で付けた羽が溶かされていくイカロスのような、落下の前兆のようなものを感じただけだった。
落下。
私は嫌な気分だった。
私は、今日、高層ビルの屋上で顔も見たくない奴と待ち合わせをしていたのだ。
ベティは、まだ寝ていた。
断片46 終
This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)