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「雨族」
断片34-風のなかで眠る女
「5章・風の高原Ⅲ」
今、何だかおかしなものを見たような気がする。
僕は物質世界の僕に何とか連絡をとろうと、ずいぶん長い間、念をかけている。ひょっとすると、それが一瞬実現したのかもしれない。
海に向かって落ちていく途中だ。視野に1/1000秒位の間、眼下の巨大な海原に亀裂が走るのが映った。
もしかしたら目の錯覚かな?でも、確かに斜めにメリメリっという感じで世界が二つに割れた。僕は元どおりになった海に向かって滑降している。
再び僕は風の丘にたどりつく。彼女が風に吹かれて、草原の上で心地よさそうに眠っている。
僕はじっと見つめている。
彼女の表情に変化はないかと探している。
しかし、何も変わりは無い。そして終わりもない。この滑降ごっこは永久に続くんだ。何のためだ?僕は何でこんなところで同じことを繰り返さなければならないんだ?誰が僕をここに封じ込めたんだ?
風の丘の女と別れるのは淋しいが僕はここを出たい。
何だっけ?今、何かが起きたような気がするが、思い出せない。もう忘れてしまった。
彼女の穏やかな寝顔が僕の眼前にある。僕の身体は彼女の目を中心にして、ぐるぐる円を描いて回っている。何も変わった事なんて起きていやしないんだ。
いつも僕は空から落ちてきて彼女は風の草原で眠っている。
それだけなんだ、この世界は。
断片34 終
This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)