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「雨族」
断片31-風のなかで眠る女
「3章・風の高原Ⅱ」
ああああああ、僕は彼女を抱きしめたい。風の丘で眠っている女を。
今日も僕は遙か上空の一点から滑空し、彼女のもとへ、ビュービューゴゥゴゥとたどり着く。
相変らず彼女は、すやすや眠っている。
僕は、その寝顔をじっと眺める。
何も変わらない。僕はこの循環から抜け出せない。いったい、どうしたらいいんだろう。
又だ、又、僕は滑空している。耳が引きちぎられるようなスピードで降下して行く。薄い絹のような雲の群れに次々と突入していく。きらきらと細かく太陽の光を反射する海が、ぐんぐん近付いてくる。
僕はゆっくりと回りながら、落ちて行く。錐揉みになり、くいっと横に滑空する。海面すれすれに僕はスライドしていく。
丘が見えてくる。今日は下から上がっていくんだ。
ふいに世界が揺れた。ぶるっと震えた。何だろう。いつもとパターンが違う。果たして僕は丘を下から上がった事があっただろうか?
揺れは、すぐに消え失せ、気づくと僕は風の丘で空中に浮遊しながら彼女のすこやかな眠り顔を見ていた。
何も変わりはしないんだ。同じじゃないか。彼女は相変わらず気持ちよさそうに眠っている。
風が吹き、草原をさざめかせ、陽光がミルクのように立ち籠める。
次の瞬間、又、僕は天辺から滑空してくるんだ。
断片31 終
This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)