路線バスが崩壊危機にあるという。もはや深刻であり、なぜドライバーが不足しているのか、なぜ彼らの待遇改善が必要なのか。
賃金問題の背景として、路線バスドライバーの賃金は、重労働に対して低い水準にある。出庫から入庫までの間、バスの運賃収入の他にも、 ・接客業務 ・起終点での車内点検 ・清掃 など多くの業務をひとりでこなさなければならない。また、ダイヤの都合で待ち時間が多く、実質的な拘束時間が増えてしまう。残念ながら一般利用者にこの苦労が知られることはない。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」の令和4年のデータによると、路線バスドライバーの平均年収は398万7000円だ。同年度の日本全体の平均年収の中央値が 「423万円」 だった。路線バスドライバーの年収は全体より 「約6%」 低い。
2024年4月以降は、改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(厚生労働大臣の告示))に基づき、1か月の拘束時間が原則281時間以内、4週平均で1週間あたり65時間以内と定められている。
しかし、神経を使う仕事に対して給与が安いのは明らかだ。 路線バス業界では人手不足が続いているが、賃金は上がらない。コロナ禍の影響で安定した定期券収入が減少し、モータリゼーションが進展しているため、賃金を上げる余裕がない状況だ。
そして、路線バスドライバー不足は減便に直結する。路線バスの減便や廃止が進むと、通勤や通学、日常の移動手段が制限されることになる。
長野市内で路線バスを運行している長電バスは、 「日曜日運休」 を発表し、大きな話題となった。休日に働く人もいるため、免許を持たない学生はクラブ活動や通塾ができなくなることから、心配の声が上がった。
休日の運休は地域経済にも悪影響を及ぼす。路線バスがないことで、休日に人々が街に出なくなり、にぎわいが失われる。地域の観光や商業も影響を受け、住民の生活も不便になる。これにより地域の活力が低下し、最終的には都市や地域の衰退につながる。
さらに、路線バスの減少は 「自家用車の利用増加」 を招き、地域の道路の混雑や環境への負担が増す。路線バスの衰退は、 「街の衰退を加速させる」 ため、何とか食い止める必要があるのだ。
このような社会的状況を考えると、ドライバーの待遇を改善し、その数を増やすことが街の衰退を食い止める鍵となる。路線バスの安定的で安全な運行や地域交通の維持には、待遇の改善が欠かせない。
もしドライバーの給与を上げにくいのであれば、社会全体でドライバーの税金を大幅に減少させ、その負担を許容するアイデアも考えられる。また、税金を使って給与を上乗せする案もある。
こうしたさまざまな方法を社会全体で議論し、ドライバーの労働環境を改善することが急務である。もちろん、賃金を上げるだけでなく、よりよいキャリアパスの提供も重要で、例えば、事務職への転換可能性を示し、将来的なやる気を促すことが求められ、若者の就職意欲を高めることも必要だ。