昨今、中国の若者は非常時の強い味方であるインスタントラーメンをめっきり食べなくなったという。若者たちがインスタントラーメンを食べなくなった背景には一体何があるのか?

1つ目の理由は健康志向ブーム、そして急激に変化する彼らの食生活だ。Z世代と呼ばれる20代の若者たちは幼い頃からネットがある環境で育ち、あふれる情報の中で生活している。そこには国内だけでなく海外の情報も多数含まれており、とくに海外の美容やファッション、健康情報に関心が高い。

日本の「青汁」が身体によい、長寿になるという情報を聞けば、「青汁」をネットで取り寄せて毎日飲んでいるという人もいるし、都市部では退勤後にスポーツジムに通い、汗を流したあと、以前の中国人なら口にしなかった生野菜のサラダを食べたり、たんぱく質中心、低カロリーの食事を取ることを心がけたりしている、という人もいる。

驚くことに、従来、中国人の食事の定番であった脂っこい中華料理を避ける傾向さえ出てきている。そのため、「健康にあまりよくない」「野菜がない」「太りやすい」「お腹を満たすだけ」といった負のイメージがあるインスタントラーメンもあまり食べなくなってきたのだ。

2つ目の理由は、デリバリーが発達したため。中国は世界一のデリバリー大国だ。1品からでも配送料なしで、数十分以内に自宅やオフィスのデスクまで料理を配送してくれる。中華はもちろん、日本料理、ピザ、火鍋、サラダ、コーヒー1杯、ケーキ1個でも、どんな時間帯でも配送可能だ。ネットスーパーも非常に安く、日本のように配送の最低料金などは存在しない。

現地の報道によれば、一人暮らしの若者のインスタントラーメン離れが顕著だという。デリバリーはメニューが豊富だし、20~25元(約370~450円)くらいでもいろいろな食べ物が食べられるので、そっちの方が断然おいしい、という人が多い。

3つ目の理由は空港やターミナル駅での需要の大幅な減少だ。中国の各都市にある空港や高速鉄道(日本の新幹線に相当)のターミナル駅などでは、出発前に空港内にある給湯器で無料のお湯を入れて、インスタントラーメン(カップ麺タイプ)を食べる人が非常に多かった。

中国の空港やターミナル駅には給湯器があちこちに設置されている(たいていトイレの隣)。理由は「空港内のレストランは値段がすごく高くてまずいから、カップ麺のほうがましだからだそうだ。

そのため、必然的にインスタントラーメンが中国社会で占めていた“地位”はどんどん低くなっている。