NHK Eテレの討論番組、
本日28日24時(ないし明日29日0時)から
ニッポンのジレンマ、放送予定でございます。
わたくしも出演しておりますので、
ご覧頂けたら幸いです。
また、NHK出版の運営するサイト「ジレンマ+」にて
出演者の収録後インタビューが掲載されております。
今回のテーマは国際関係ということで、
いろいろ準備をしまして、
学生の頃の国際法・国際政治のノートや
ケルゼン『一般国家学』の国際法の箇所などを読み返したり、
憲法9条についての奥平先生や樋口先生の議論を読んだりいたしました。
また、将棋対チェスなどもしてみて、

日本の魅力を発見しようともしてみました。
討論の現場では、
近代法秩序の神官のような立場でお話させていただきました。
ということで、ちょっと討論の自戦記解説風に。
「近代」というのは、
統一された抽象的な原理で世界を規律する思想で、
近代法や近代政治というのは、そういう思想に基づいてできているわけです。
法や政治や国際秩序というのは、
電気・ガス・水道や道路、鉄道網のような社会的インフラです。
「主権国家併存の国際システム」というのも、
やはり、我々の生きる地球の社会的インフラでありまして、
地球上に生きる人々に、平和や安全や人権を保障するためには、
それぞれの領域で暴力を管理し、その領域の人々の生活に責任を持つ主体
すなわち、国家が必要であるわけです。
主権は、対内最高、対外独立の権力と定義されますが、
対内最高でないと領域内の暴力を管理できませんし、
対外独立でないと領域に対して責任を持てません。
また、主権というのは、それが裸の状態で行使されると
非常な圧政になりますので、
立憲主義(法の支配、権力分立、人権保障、民主主義)
による歯止めをかけるわけです。
(法学部の国際法や憲法や国際政治の講義では、
こういったことが徹底的に叩き込まれます。)
というわけで、主権国家が持っている主権や
立憲主義の構想に従った統治のルールというのは、
「世界中で安全や人権を保障しよう」という
国際秩序のおおもとの規範を実現するための
重要な道具なわけです。
そうした国際秩序のおおもとの規範や、
地域内で確立した主権、立憲主義というのは、
清潔な上水道や、混乱なく運行される鉄道網のように、
我々が生きる上で重要な社会的インフラなのですね。
(現在のイラクやアフガニスタンの例を見ても分かるように、
地域内できちんと暴力を集中した権力を確立するというのは極めて難しく、
また、諸外国に目を向けると、
立憲主義的なルールに基づいて国家を運営することは、
さらに難しいことなのですね。
途方に暮れそうです。)
(このあたりは、政治学者の吉田先生や
国際人権NGOで活躍されている土井弁護士と、
強く意見が一致したことでした。)
で、国際関係を考える際には、
各国の主権や、それに基づく国際秩序というものが、
全地球的公共利益(全人類の平和、安全、人権)のためにあり
重要なインフラであることを常に自覚しなくてはいけません。
(というようなわけで、
近代はもういらない、近代はもともとなかった的な
議論に対しては、かなり警戒的な態度をとって討論させていただきました。
当たり前すぎて自覚できないですが、
やはり近代水道は、我々にとって欠くことのできないインフラなのです!)
もちろん、ここにお話したことは、大原則であって、
現実には、それがうまく機能しないことが多々あります。
(とは、共演いたしました陳先生のご指摘です。
ごもっともでございます。)
ただ、そうした例外問題は、大原則を正確に把握してこそ
解決できる問題なはずではないか。
(と、こちらの収録後インタビューでお話ししております。
ちなみに、私は、主権国家の相互協力の進展によって、
地球的公共価値の担い手となる主体を創出しようという
ケルゼン先生や長尾龍一先生の議論に非常にシンパシーを感じております。
参照 長尾龍一『リヴァイアサン』(講談社学術文庫))
と、これが、近代法秩序の神官としての基本的スタンスになるわけです。
こんなスタンスでお話しさせていただきました。
共演者の皆様とは、とても楽しく議論させていただきましたし、
専攻分野外の議論や著作にふれることができて、大変勉強になりました。
どうもありがとうございました。
また、このような興味深い議論に参加させていただく貴重な機会を
与えてくださいましたスタッフの皆様に、御礼申し上げます。
本日28日24時(ないし明日29日0時)から
ニッポンのジレンマ、放送予定でございます。
わたくしも出演しておりますので、
ご覧頂けたら幸いです。
また、NHK出版の運営するサイト「ジレンマ+」にて
出演者の収録後インタビューが掲載されております。
今回のテーマは国際関係ということで、
いろいろ準備をしまして、
学生の頃の国際法・国際政治のノートや
ケルゼン『一般国家学』の国際法の箇所などを読み返したり、
憲法9条についての奥平先生や樋口先生の議論を読んだりいたしました。
また、将棋対チェスなどもしてみて、

日本の魅力を発見しようともしてみました。
討論の現場では、
近代法秩序の神官のような立場でお話させていただきました。
ということで、ちょっと討論の自戦記解説風に。
「近代」というのは、
統一された抽象的な原理で世界を規律する思想で、
近代法や近代政治というのは、そういう思想に基づいてできているわけです。
法や政治や国際秩序というのは、
電気・ガス・水道や道路、鉄道網のような社会的インフラです。
「主権国家併存の国際システム」というのも、
やはり、我々の生きる地球の社会的インフラでありまして、
地球上に生きる人々に、平和や安全や人権を保障するためには、
それぞれの領域で暴力を管理し、その領域の人々の生活に責任を持つ主体
すなわち、国家が必要であるわけです。
主権は、対内最高、対外独立の権力と定義されますが、
対内最高でないと領域内の暴力を管理できませんし、
対外独立でないと領域に対して責任を持てません。
また、主権というのは、それが裸の状態で行使されると
非常な圧政になりますので、
立憲主義(法の支配、権力分立、人権保障、民主主義)
による歯止めをかけるわけです。
(法学部の国際法や憲法や国際政治の講義では、
こういったことが徹底的に叩き込まれます。)
というわけで、主権国家が持っている主権や
立憲主義の構想に従った統治のルールというのは、
「世界中で安全や人権を保障しよう」という
国際秩序のおおもとの規範を実現するための
重要な道具なわけです。
そうした国際秩序のおおもとの規範や、
地域内で確立した主権、立憲主義というのは、
清潔な上水道や、混乱なく運行される鉄道網のように、
我々が生きる上で重要な社会的インフラなのですね。
(現在のイラクやアフガニスタンの例を見ても分かるように、
地域内できちんと暴力を集中した権力を確立するというのは極めて難しく、
また、諸外国に目を向けると、
立憲主義的なルールに基づいて国家を運営することは、
さらに難しいことなのですね。
途方に暮れそうです。)
(このあたりは、政治学者の吉田先生や
国際人権NGOで活躍されている土井弁護士と、
強く意見が一致したことでした。)
で、国際関係を考える際には、
各国の主権や、それに基づく国際秩序というものが、
全地球的公共利益(全人類の平和、安全、人権)のためにあり
重要なインフラであることを常に自覚しなくてはいけません。
(というようなわけで、
近代はもういらない、近代はもともとなかった的な
議論に対しては、かなり警戒的な態度をとって討論させていただきました。
当たり前すぎて自覚できないですが、
やはり近代水道は、我々にとって欠くことのできないインフラなのです!)
もちろん、ここにお話したことは、大原則であって、
現実には、それがうまく機能しないことが多々あります。
(とは、共演いたしました陳先生のご指摘です。
ごもっともでございます。)
ただ、そうした例外問題は、大原則を正確に把握してこそ
解決できる問題なはずではないか。
(と、こちらの収録後インタビューでお話ししております。
ちなみに、私は、主権国家の相互協力の進展によって、
地球的公共価値の担い手となる主体を創出しようという
ケルゼン先生や長尾龍一先生の議論に非常にシンパシーを感じております。
参照 長尾龍一『リヴァイアサン』(講談社学術文庫))
と、これが、近代法秩序の神官としての基本的スタンスになるわけです。
こんなスタンスでお話しさせていただきました。
共演者の皆様とは、とても楽しく議論させていただきましたし、
専攻分野外の議論や著作にふれることができて、大変勉強になりました。
どうもありがとうございました。
また、このような興味深い議論に参加させていただく貴重な機会を
与えてくださいましたスタッフの皆様に、御礼申し上げます。
興味深いテーマの番組ですね。残念ながら、見ることはできなかったのですが。
さて、一つだけおうかがいしたいのですが、先生は民主主義と国民主権の関係はどのようにお考えですか?最近のざっぱな議論では、民主主義の名のもとに、直接民主政的な施策を主張する論評が多く危険を感じます(住民投票や首相公選制など)。国民主権の二つの立場(ナシオン、ブープル)と民主主義の関係もいまいち整理しきれていません。
もし、よろしければご教示して頂けるとありがたいです。長文かつとりとめのない質問で申し訳ありません。
先日(9/28)のニッポンのジレンマを様々な角度から多角的に
日本の未来について議論されているのを大変興味深く拝見しました。
番組後、初めて先生のブログを読ませて頂いたのですが言葉のチョイスもとても面白く
私には難しい話題も楽しく読ませて頂きました。
私は海外に長く住んだ経験から日本を外側から見てしまう事が多いのですが、
その癖自分が所属する国のルール(法律・憲法)について理解出来ていない事を実感しました。
今後も先生のブログを通じて楽しく法律・憲法を勉強させて頂きます^_^
ジレンマは、NHKオンデマンドでも配信中のようなので
興味がございましたら、そちらものぞいてみてください。
さて、民主主義と国民主権ですが、
そのあたりについては、わたくしの法学教室の連載の
第二回(今年の6月号)のテーマになっておりますので
そちらをご参照いただけますとありがたいです!
テレビの討論番組は初めての体験で、
自分の言葉がどこまで届くか、不安もあったのですが、
届くべきところに届いているようで、
とてもうれしく思いました。
また、ブログ、遊びに来ていただけますと嬉しいです。