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大蔵永常



大分県日田出身の偉大な農学者、大蔵永常(1768年~1861年)。
宮崎安貞、佐藤信淵とともに江戸時代の三大農学者の一人。

大蔵永常はユニークな人物です。
単なる農業研究のプロであるだけでなく、農産物を商品にしたてる
“商品開発プランナー”でもありました。

豊後竹田の図書館から大蔵永常著『広益国産考』を借りました。
ほとんど読まれていないようで、惜しいと思います。
彼はこの著作で“特産品”の開発を提案しています。
農産物の栽培技法から、加工の方法や売り方まで説明しています。

これほどの人物がほとんど知られていないというのは、ひどいことです。私たちの時代の教科書にはなかったと思いますが、今はどうなんでしょう。農を軽視する時代なので今もないでしょうね・・・



大蔵永常の著書『除蝗禄(じょこうろく)』の序文。
「蝗」は「いなご」ですが、稲の害虫一般について論じています。
序文は江戸の儒者、佐藤一斎が書いています。

 国は民を基本的なよりどころとし
 民は食べることを最も大切に考える。
 食糧がなければ民はなく
 民がなければ国はない。

 したがって昔から世を治めるものは
 民の食を足らしめることを
 何よりも大切な任務とし
 勧農こそはそのかなめであった。
 後世の為政者たるものは
 このことを肝に銘じるべきである。

 国家が泰平になってからすでに二百年余
 億兆の民は和楽の時世に満足し
 食もたって暮らしている。
 よき世の中である。

 だが、ひとたび洪水、日照り、飢饉などの
 天災が起きたさいは
 時を失せずに乗りきることは容易ではない。

 およそ民の心情をいうものは
 しっかりした頼るところがあって
 はじめて安心して仕事にはげむものである。
 国による救荒の備えが確固としてしていれば
 心配はないといえる。

 しかし凶作をもたらす蝗の防除の方法については
 いまだに確立していない・・・

大蔵永常はこの著作のなかで
稲の害虫の防除方法について様々な方法を提案しています。
特にクジラの油や、カラシ油、アサガオ油、菜種油、アセビ、塩のニガリ、石灰等について解説しています。

今は化学農薬全盛の時代なので、大蔵永常が提案した方法はほとんど忘れられていますが、「自然流家庭菜園」の方法を説く人々が細々とこういう自然農薬を継承しているようです。

エンジェルファームでは、自然農薬として石けん水や竹酢液を用いています。主にバラ用です。



大蔵永常の肖像です。
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