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プラセボ効果とノセボ効果

2019-12-10 10:35:51 | 
プラセボ効果については、このブログでも何回も取り上げ、これを用いた治療法があるのではないかと考えています。

新薬の臨床試験では、開発する新薬と比較する対照薬(既存薬)と必ずプラセボ(偽薬)を入れて効果を判定します。この時本来何の作用もないはずの、プラセボでも患者が改善してしまうことをプラセボ効果としています。

これは昔から知られていましたが、臨床試験の薬効の正確な評価を行う上での妨げになることから、長い間厄介者扱いされていました。

またこの時副作用情報も詳しく伝えますので、プラセボなのに副作用が出てしまうことがあり、これをノセボ効果と呼んでいます。このノセボ効果は、新薬の評価とは全く関係がないため、正確な情報は出ていません。

偽薬によるプラセボ効果を最初に報告したのは1955年ハーバード大学のグループでした。15件の種々の疾患に対して、対照群1082例中35%の患者にプラセボのみで効果が認められたことを報告しています。

臨床試験でのプラセボ効果は大雑把に(疾患の種類などで変わるようです)20%ぐらいとされていますので、この35%も効果が出るというのはすごい結果といえます。それでもプラセボ効果はなぜ起きるのかなどの検証はほとんど行われていませんでした。

それでも最近になり医療従事者などの関心が出てきて、研究対象のひとつとして注目されるようになってきました。プラセボ効果発現の原因に関しては、治療や医師に対する信頼感や薬が「効く」という期待感がその根底にあるとされています。

ブリティッシュコロンビア大学では、実薬を投与される確率が高いと聞かされたパーキンソン病患者では、プラセボを投与されても線条体におけるドパミンの分泌量が高くなることを2018年に報告しています。プラセボ効果が期待の強さに依存することを示しているようです。

ミシガン大学のグループは、プラセボ効果が発現する際に働く脳領域についてポジトロンCTを用いて検討しました。その結果、薬剤の鎮痛効果に対する期待が大きいほど、側坐核におけるドパミンの分泌量が高まっていることが分かりました。

また薬剤の痛みに対する緩和効果を高く評価したほど、プラセボ効果発現時の側坐核の反応性が高くなりました。

これの結果からプラセボ効果発現の背景には、信頼感や期待感といった感情の変化が起点となり、そのことが脳内の神経化学的反応に影響を及ぼしていると考えられます。

感情の変化がどのようなメカニズムで化学的反応に影響を及ぼしているかは、まだ不明で今後の研究が待たれるところです。

このようにやっとプラセボ効果という厄介者を科学的に追及する動きが出てきましたが、調べるほどに不思議が出てくるという段階で、これを治療に用いるという発想は出ていないようです。


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