ごっとさんのブログ

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病原菌にみるヒトと病原体のイタチごっこ

2022-12-18 10:36:35 | 
新型コロナの騒動で感染症への認識は変わってきたかもしれませんが、過去は死因の累計第一位は感染症であったことは確かです。

結核をはじめとして多くの感染症が不治の病とされていましたが、1940年代にペニシリンという抗生物質が発見され状況は一変してきました。

その後ほとんどの感染症は、抗生物質によって治療できるようになりましたが、新たな「耐性菌」の問題が浮上してきています。当初の耐性菌はペニシリンを分解する酵素(ペニシリナーゼ)を持っていることが分かっています。

この薬剤耐性菌の出現は、ヒトが抗生物質を濫用するのが原因とされ、最近は抗生物質の使用が制限されるようになっています。しかしこの濫用は若干出現の原因となっている可能性はありますが、多くは自然現象といえます。

自然界には非常に多くの微生物が混在しており、常に突然変異を繰り返しています。この変異株というのはコロナでおなじみになっていますが、他の微生物でも無数に存在しています。

そういった変異株の中で、他の微生物を殺すような物質を偶然作り出せば、生存競争の中で有利になりそういった株が生き残るわけです。これが抗生物質としてヒトが取り出し利用しているものです。

そして自然界の中では、抗生物質を作る微生物が増えてくると、それに対抗できるように突然変異した微生物が出てきます。これが耐性菌となるわけですが、人間が抗生物質を発見する前から耐性菌は存在しているのです。つまり耐性菌はヒトが作り出してしまったものではありません。

この耐性化の具体例として黄色ブドウ球菌について取り上げてみます。もともと病原菌として分離される黄色ブドウ球菌の大部分はペニシリンが有効(感受性)でした。しかしペニシリンが実用化されてしばらくたつと、ペニシリン耐性の黄色ブドウ球菌が出現し、みるみるまん延していきました。

この時はペニシリナーゼという酵素を持つタイプで、ペニシリンを分解することで無毒化し生き延びたものでした。その後1960年にペニシリンの一部を改変したメチシリンを開発し、これはペニシリン耐性菌にも効果を発揮しました。

ところが翌年の1961年にはこのメチシリンが効かない黄色ブドウ球菌(MRSA)が出現したのです。これに対抗するために多くの抗生物質が開発され、バンコマイシンが有効とされています。

ところが1996年以降、このバンコマイシンにも耐性の黄色ブドウ球菌が世界各地で時々検出されています。現在このバンコマイシン耐性菌にも有効な抗生物質は出てはいますが、まさに抗菌薬開発と耐性菌出現は「イタチごっこ」といえる状況にあります。

ただしこういった多剤耐性菌は毒性が弱くなる傾向もありますので、それほど問題とはなっていませんが、このイタチごっこが永遠に続くのはやむを得ないでしょう。


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