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ガン免疫療法の進展

2019-08-06 10:18:21 | 健康・医療
抗PD-1抗体(オプジーボなど)によるチェックポイント治療は、ガンに対する免疫にブレーキがかかるのを阻害する治療で、対象になるガンの範囲は着実に拡大してきていますが、ガンに対する免疫の弱い人には効果がありません。

この治療をもっと多くのガンに使えるようにするには、ガンに対して確実に免疫を成立させることがカギとなります。このための戦略の一つが、ガン細胞と免疫細胞が反応しあっているガン組織での免疫反応を高める治療法の開発です。

ガン免疫療法の根幹は、ガン細胞に特異的な免疫反応を誘導することです。この最初の引き金が引かれるのが、ガンが増殖している組織で、ガン細胞が発現しているガン抗原がT細胞を刺激することで始まります。

この時細胞内で様々なサイトカインと呼ばれる免疫細胞活性化因子が分泌されます。IL-2もそのひとつで、T細胞を活性化する重要なサイトカインでこれまでもガン局所に注入する治療が試みられてきましたが、良い結果は得られていません。

この理由としては、局所に注入したサイトカインが循環系により除去されてしまうことや、IL-12のようにさらに強い免疫活性化サイトカインは、全身に回ると強い副作用を引き起こすためです。

そこでマサチューセッツ工科大学のグループは、IL-2やIL-12がコラーゲンと結合して組織内に長くとどまるようにし、その効果を確かめた論文を発表しました。

この研究ではIL-2やIL-12を、ガン組織に多く存在するコラーゲン類に結合するルミカン分子と融合させ、ガン局所に長くとどまるように改良しました。

様々なガンで実際に使用されている、ガンに対する抗体を投与する治療法との相性をメラノーマで確かめました。抗体だけではほとんど効果がない場合でも、ルミカン-IL2を組み合わせると、ほとんどのマウスの腫瘍を抑えることを明らかにしています。

さらに全身投与すると副作用の強いIL-12も、ルミカンと結合させると局所に留まって、副作用が軽減されることも示しています。

この結果を受けて、ルミカンと結合させたIL-2とIL-12を抗PD-1抗体と組み合わせる実験を、やはりメラノーマをモデルに行っています。

もともと抗原性の低いメラノーマを用いているため、抗PD-1抗体ではほとんど効果がありませんが、ルミカン-IL2およびルミカン-IL12を組み合わせて局所投与すると、腫瘍を消失させることができました。

このようにサイトカインをルミカンと結合させガン局所へ長く留まるようにする、比較的簡単な改変ですが、抗PD-1チェックポイント治療をもっと多くの患者へ拡大できると期待されています。



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