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蜘蛛の糸とシルク産業

2016-04-06 10:41:19 | 自然
3か月ほど前になりますが、このブログに日本の養蚕業について書きました。

この絹のことをシルクといいますが、この言葉はタンパク質でできた繊維全般を指すようです。蚕が作った繭からの繊維が絹ですが、自然界ではタンパク質で糸を作る生物は他にもかなりあり、注目されているのが蜘蛛の糸です。

蜘蛛の巣というと手で払えば簡単に壊れる、非常に弱いもののような気がしていましたが、実際にはあの太さの繊維として比較すると、鋼鉄の線よりも強度があるというから驚きです。私はこの蜘蛛の糸がタンパク質であるということすら知りませんでした。

繊維というと絹のほかに、セルロースこれは糖がつながったものですが、これでできた綿や麻があり、最近はナイロンのような合成繊維があります。この合成繊維を細くして編み上げ強度を増したものにケブラー繊維がありますが、これは防弾チョッキなどに使われています。ところが蜘蛛の糸はこのケブラー繊維より強度が高く、いろいろなところで研究されているようです。

慶応大学からのベンチャー企業では、蜘蛛の糸の大量生産に取り組んでいるようです。ここでは国内唯一の繊維学部がある信州大学の研究を紹介します。信州大学では、絹の中に蜘蛛の糸を織り込むことによって、強度の高い繊維を目指しています。しかし問題は蜘蛛の糸の大量生産にあったようです。蜘蛛を大量に飼育すると、必ず共食いが始まってしまい、一か所で大量の蜘蛛を育てることはできないようです。また蜘蛛は、体内に液体状のタンパク質をため、これを体外に出すとき固体の繊維にしています。どうもこの時タンパク質の構造変化が伴うようで、人間は液体から固体にする技術が見つかっていないようです。

そこで信州大学では、蜘蛛から糸を作る遺伝子をクローニングして、蚕の遺伝子に組み込むということに挑戦しました。つまり蜘蛛の糸を蚕に作らせてしまおうというものです。実際は蜘蛛の糸と一言で言っても、いろいろな種類があり、どの遺伝子が一番適当な蜘蛛の糸を作るかの探索から始まったようです。

遺伝子については、昆虫の遺伝子はかなり研究が進んでいたようですが、蜘蛛は当然昆虫ではありません。それでも何とか糸を作る遺伝子を特定し、蚕の中に組み替えることに成功したようです。この蚕は繭を作る糸の中にどの程度の割合かわかりませんが、蜘蛛の糸を含ませたものになりました。これから絹の繊維を作ると、若干強度が増し手触りもよくなったようです。

この技術が産業として成立するかなど課題は多いようですが、元養蚕地域などが企業化に乗り出しているようですので、これが新しいシルク産業となるかもしれません。

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