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新型コロナ治療薬が目指した「緊急承認」とは

2022-07-06 10:30:44 | 
国産の新型コロナ治療薬である塩野義製薬のエンシトレルビルが、新設された「緊急承認」制度を適用した承認が審議されましたが、承認には至りませんでした。

この今年5月に新たに設置された緊急承認という制度は、新薬の開発に携わったものとしてはなかなか興味深い、ある意味柔軟な制度といえます。

アメリカ食品医薬品局(FDA)には緊急時に未承認薬などの使用を許可したり、緊急承認の適応を拡大したりする「緊急使用許可」という制度があります。日本にも「特例承認」という制度があり、国民の健康を脅かす場合に新型コロナワクチンや治療薬で適用されてきました。

この場合国外の承認薬については、日本人にも安全かつ有効に使えるという確認が改めて必要でした。そのため世界中で接種された新型コロナワクチンの臨床試験があるにもかかわらず、実用化まで時間がかかり、このワクチンの特例承認は海外から2〜5か月遅れてしまいました。

日本の承認制度には「通常承認」、「条件付き早期承認」、「特例承認」と今回新設された「緊急承認」があります。

一般的に行われているのが通常承認ですが、臨床試験データに基づいた判断が必要で、申請してからもデータの追加などが要求されることがあり、年単位の時間がかかるものです。

次の条件付き早期承認は、希少疾病用医薬品や一部の先駆的医薬品などに適用されるもので、臨床試験のための十分な人数を集めることができない難病などに適用されています。

特例承認は海外で流通している医薬品が対象で、緊急時に健康被害の拡大を防止するため、外国において販売などが認められている医薬品などが対象となります。ここまでは安全性と有効性の臨床試験による確認が必要です。

新制度の緊急承認はすべての医薬品が対象ですが、緊急時に健康被害の拡大を防止するために安全性が確認されたうえで、有効性が推定される医薬品などが対象となっています。

有効性は推定でもよいのですが、有効性確認は治験途中でもよく、実用化2年以内に有効性が確認できなければ承認は取り消されます。この通常承認以外は制度としてはあるのですが、新型コロナのような特殊な状況下でなければ適用されることはないような気がします。

現在の状況では新型コロナ治療薬の開発はかなり難しく、国民のほぼ全員がワクチン接種している状況では、よほど多くの被験者を集めない限りほとんどの人が自然に治ってしまい、治療薬の有効性は出ないと思われます。

そこで緊急承認制度が出てきたのですが、既に治療薬もある状況で、無理に国産治療薬を出す必要性があるのかは、やや疑問が残るところです。


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