ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

脳の物質環境の影響を受けやすい「化学シナプス」

2022-12-20 10:41:45 | 自然
このブログでも脳のはなしは時々取り上げていますが、脳科学が進展したといっても謎の部分が多いのが脳といえそうです。

ここでは脳の全体像を理解するために役に立ちそうな「化学シナプス」を紹介します。神経細胞と神経細胞の接合部をシナプスと呼んでいます。

神経細胞を伝わってきた電気信号は、シナプスで伝達物質による化学反応に変換され、伝達物質を検出した次の神経細胞で再び電気信号に戻されます。こうした伝達物質による化学反応で、次のシナプスへ受け渡す仕組みを「化学シナプス」といいます。

このような伝達物質は1種類ではなくいくつかの種類があり、さらに伝達物質が同じでも、それを受け取る側の受容体が異なることもあります。

この伝達物質によって生み出す電気的変化は、次の神経細胞にプラス(脱分極)方向の電気的変化をもたらす興奮性のものと、マイナス(過分極)方向の電気変化をもたらす抑制性のものがあります。

たとえばアミノ酸の一種であるグルタミン酸は、脳内で多く見られる興奮性の伝達物質のひとつで、可塑的変化を起こし記憶や学習に関わっていると考えられています。このあたりが昔グルタミン酸を摂取すると、学習能力が向上するなどといわれた由縁かもしれません。

抑制系の伝達物質としては、γアミノ酪酸(GABA)があります。信号を受け取った神経細胞の細胞膜にあるマイナスの塩素イオンが通過する孔を開いて、抑制性の電気的変化を次の神経細胞に引き起こします。

モノアミン系の伝達物質としては、交感神経のノルアドレナリン、延髄網様体などのアドレナリン、統合失調症の原因として疑われているドーパミン、うつ病の原因として疑われているセロトニンなどがこのファミリーになります。

化学シナプスでは化学反応が情報伝達に関わるので、さまざまなシナプスに作用することによってクスリはその効果を発揮します。

たとえば麻酔薬や解熱剤、鎮痛剤、瞳孔散大剤、血管拡張作用を利用した血圧降下剤、神経疾患治療薬、喘息治療薬のなかには、シナプスに作用するものが多くあります。また動物や植物が持つ毒物にも化学シナプスに作用するものがたくさんあります。

たとえば食中毒を起こすボツリヌス菌の毒素は、アセチルコリンの放出を抑制します。破傷風菌の毒素は細胞膜受容体の働きを阻害します。このように化学シナプスの微妙なバランスによって、脳ひいては体全体の健康を調節しているといえるようです。

これが化学反応であるため、薬や毒物によって容易に調整が可能であり、多くの医薬品の開発や、戦争での化学兵器に繋がっているようです。

この化学シナプスはあくまで脳の機能の一部ですが、これをうまくコントロールすにはまだまだ多くの研究が必要といえそうです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿