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痛みの不適切治療が慢性痛や経済損失を招く

2022-11-05 11:17:55 | 健康・医療
私も歳のせいか時々あちこちに痛みが出るようになってきましたが、完全に個人的なものでそれがどの程度かを比較することはできません。

かみさんがお腹が痛いといっても、放置しても良いのか何か処置した方がよいのかは他人は全く判断できません。今までの経験からすると、どうも私は痛みに強い(あまり感じない)体質のような気がしています。

さて米国では痛みに対する不適切な治療によって生じる、経済的損失についての検討が1970年代から行われてきました。米国議会は2001年からの10年間を「痛みの10年」とすることを採択しました。

この採択に合わせて米国の医療施設を評価する委員会は、脈拍数と呼吸数、体温、血圧に加えて「痛み」を5番目のバイタルサイン(生命兆候)と位置付けました。

「痛みの10年」の採択に当たっては、国立衛生研究所が1982年米国国民のうち6500万人が何らかの慢性痛をかかえているとの数字を出しました。さらに1999年の調査では、米国の全成人の約9%が強度の慢性痛に苦しんでいること、痛みを抱えている期間が1年半以上であることが判明しました。

また適切な治療を行えば医療費は58%削減できるとの試算が報告されています。痛みによる就労の制限による労働生産性の損失は、年間約8兆円と概算されています。

以上のような事実に基づく痛みの10年宣言では、医師の再教育をすることによって、痛みによる経済的損失を少なくすることをエンドポイントのひとつと考えていたのです。

さて日本の現状としては、2004年の調査では慢性痛の保有率は13.4%、全国では実に1700万人に上るとする推計結果があります。2009年の調査では、保有率は22.9%と増加しています。

慢性痛を有している人の過半数が社会活動に支障をきたしており、全体の14.3%の人が傷みのために学校や会社を休んだ経験があるとしています。これらの結果を受けて2009年に慢性痛に取り組むための国策として、厚生労働省に「慢性の痛みに関する検討会」が立ち上げられました。

今後高齢化社会へと向かう日本では、慢性痛の保有率が増加することは必然であり、何らかの国策を講じる必要性に迫られています。慢性痛をかかえている患者の約60%が過去半年間に2〜9回は医療機関に受診したものの、痛み治療の専門機関を受診したのはわずか2%という報告もあります。

さらに患者の3分の1は医療機関での治療を受けておらず、多くが「薬局で非ステロイド系抗炎症薬」を入手したことがあるとしています。こういった不適切な治療によって慢性痛が作り出されている危険性は高いようです。

痛みは直接的な危険信号ですが、あまり重視せず放置または不適切な治療で済ませることが多いので、個々が注意すべき問題といえるようです。


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