ごっとさんのブログ

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毒キノコが損傷した脳の神経接続を修復

2021-08-07 10:28:18 | 
昔から幻覚作用を持つ毒キノコはよく知られており、こういったキノコの総称としてマジックマッシュルームが使われているようです。

日本でも「今昔物語」に舞茸(現在のマイタケとは異なる)や笑茸の記載が残っています。中世のアステカ帝国ではテオナナカルトと呼び、神聖なキノコとして扱いましたが、これはメキシコ原住民の間で現在でも続いています。

1950年代には幻覚成分が特定されましたが、このころは栽培されるなどしてLSDと共に「サイケ」の原動力となっていました。

日本をはじめ世界中で幻覚剤は規制対象となってきましたが、近年は精神障害治療の利用に焦点が当てられ、研究が盛んに行われています。この潮流は「サイケデリック・ルネッサンス」つまり幻覚剤の再評価と呼ばれています。

その流れのひとつとして、マジックマッシュルームに含まれる幻覚作用成分「シロシビン」の効果を裏付ける論文が発表され、注目を集めています。

イエール大学の研究チームは、電気ショックによるストレスを与えたマウスに、シロシビンを1回投与し、レーザー顕微鏡でマウスの脳の変化を観察する実験を行いました。その結果シロシビンを投与されたマウスは、樹状突起スパインが大きく増加したことが判明しました。

樹状突起スパインとはニューロンの情報伝達を助ける組織で、長時間ストレスにさらされたり、うつ病になると減少することが知られています。このシロシビンにより、ストレスによって損傷した脳の神経結合が修復されたことになります。

樹状突起スパインの密度と大きさは、シロシビンの投与から24時間で反応が見られ、投与の7日後で半分が持続し、34日後でも約3分の1が残りました。さらに行動面でも変化が見られ、シロシビンを投与したマウスは電気ショックなどのストレスに対処するようになったようです。

シロシビンによりニューロンの情報伝達が活発になったと結論付けました。マジックマッシュルームのシロシビンに抗うつ薬としての期待がかかりますが、人体への応用はまだ先のことになりそうです。

研究チームも細胞レベルでこの薬が及ぼす影響をもっと知る必要があるとしています。マジックマッシュルームは違法薬物という社会の概念を払拭することも課題ですが、アメリカオレゴン州では合法化されるなど、少しずつではありますが実用化に向けて進んでいるようです。

私は昔から毒キノコと海の毒カイメンは、生理活性物質の宝庫と思っていました。自然が作り出すこういった物質を調べていけば、有用な化合物が見つかる可能性は高いと考えています。


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1 コメント

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貴ブログを紹介の依頼 (トミ)
2021-08-08 10:10:09
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