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細菌との共生といわれているが体内は無菌

2022-05-26 10:26:04 | 自然
自然界には微生物があふれており、私も現役のころは地方に出張するとスプーン一杯ほどの土を集めてくるように頼まれていました。

ここから微生物を分離し、生産する有用物質を探索するという目的でしたが、わずかな土壌の中にも1億ほどの微生物が生育しているようです。

人の身体にも兆を超す微生物がいるといわれていますが、体の表面微生物についてはあまり研究が進んでいないようです。以下微生物を分かりやすく「細菌」と記載しますが、この細菌が体内に入ると色々な感染症を発症します。

それでも身の回りには無数の細菌が存在している割には、それほど感染症の頻度は高くありません。食道や胃、大腸などの食べ物の通り道は、一見すると「体の中」に思えますが、医学的には「体の外」と考えることができます。

口から肛門をつなぐ一本の道は、外界と完全に連続した空間といえるからです。実際食べ物の通り道である消化管の中は、それ以外のエリアと違い微生物学的には圧倒的に「汚い」状態であり、口の中や腸の中はおびただしい数の細菌であふれています。

消化管の壁を隔てた外側の空間、すなわち「体内」の空間は完全に無菌であり、血液も骨も筋肉もすべて微生物学的には圧倒的に「きれい」になっています。

この体内に細菌が入り込むと、かなり大変な事態を引き起こします。例えば大腸ガンが大きくなり底が深くなると、大腸に穴が開いてしまうことがありこの状態を「せん孔」と呼んでいます。すると腸の内容物が腹腔内にひろがり、重篤な腹膜炎を引き起こし命に関わる事態に発展します。

一方で一見すると「汚い」と思われがちな尿は、微生物学的にはむしろ「きれい」といえます。無菌である血液が腎臓でこし出され、それが尿となって尿管を伝い膀胱に溜まっているのです。

しかし尿の出口は肛門と近い距離にあるため、腸内細菌を始め感染症の原因となる細菌が多くなっています。これが膀胱に逆流するとやはり一大事で、膀胱炎などの感染症を引き起こします。

その他呼吸器も外気を吸入していますので、外界の細菌が入るはずですが気管支などの繊毛などによって、肺の中は無菌状態が保たれています。ヒトは「細菌と共生している」といわれ、腸内細菌叢により色々な影響を受けていることが確認されています。

このブログでも腸内細菌により肥満が引き起こされるといった話題を出していますが、これはあくまで腸内細菌が出している情報伝達物質が体内に入っているのであり、細菌自身は完全にブロックされています。

本当に大事な内部のシステムは、細菌に侵されないよう厳重に守られているといえます。この辺りがヒトのシステムの面白いところかもしれません。


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