ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

ノーベル医学生理学賞が決定

2020-10-07 10:25:57 | 時事
今年もノーベル賞発表の時期となり、私が最も興味を持っている医学生理学賞はアメリカ、カナダの3氏に決まり、残念ながら日本人の受賞とはなりませんでした。

この3氏の受賞理由は「C型肝炎ウイルスの発見」ということでした。世界保健機構(WHO)によると、C型肝炎の患者は世界で年間約7000万人に上ると推定され、このうち40万人が肝硬変や肝臓ガンでなくなっています。

ここではこのC型肝炎について述べてみます。まず肝臓がんの原因から始めますが、「肝臓の病気」というとアルコール(酒)を思い浮かべるのですが、実は肝臓がんの大部分はウイルス感染症が原因となっています。

肝臓は様々なタイプの細胞で構成されています。肝臓を構成する細胞がガン化してできたガンを「原発性肝ガン」と総称し、他の臓器から転移してできたものは転移性肝ガンと呼びます。

そのうち肝細胞がガン化してできたものは「肝細胞ガン」で、世界的にはこれが肝ガンの約80%を占め、日本では94%となっています。

肝臓を構成する胆管の細胞がガン化してできた「肝内胆管ガン」など、他のタイプと区別するのは、原因も治療も予後も違う、全く異なる病気だからです。この肝ガンの大部分を占める肝細胞ガンですが、その原因の70〜90%はB型肝炎ウイルスかC型肝炎ウイルスによる感染症です。

日本では約7割がC型肝炎、約1割はB型肝炎とされています。ウイルス感染によって肝臓に慢性的な炎症が起こり、肝細胞が破壊再生を繰り返すうちにガン化するというのが、肝細胞ガンが引き起こされる仕組みとなっています。

従って多くの場合、肝ガンができた肝臓は慢性的な病気(慢性肝炎や肝硬変)をかかえています。多くは10年や20年といった長い時間をかけて肝臓がむしばまれ、傷んだ状態になるわけです。

現在C型肝炎と呼ばれている病気は、かつて「非A非B型肝炎」と呼ばれていました。A型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスが同定され、診断法が確立してもなおこれらが関与しない未知の肝炎が存在したからです。

しかもこの肝炎は多くが慢性化し、肝硬変や肝ガンへと進行する恐ろしい特徴を持っていました。これが「C型肝炎」という病気として定義されたのは、ほんの30年ほど前のことです。

1989年に初めてC型肝炎ウイルスが発見されました。これを契機にウイルス検査が可能となり、C型肝炎の診断、治療薬の開発につながりました。今回のノーベル賞は、こうした功績に与えられたもので、ちなみにB型肝炎ウイルスの発見も1976年にノーベル賞を受賞しています。

近年直接作用型抗ウイルス薬と呼ばれる画期的な治療薬が開発され、C型肝炎の95%以上が治癒を目指せるようになりました。今回の受賞は、こうした近年の目覚ましい治療の進歩も背景にあるようです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿