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ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

処方薬の朝服用にはなにも根拠がない

2025-07-12 10:35:29 | 
私は吸入薬を毎日1回使用していますが、忘れないよう風呂から出てきた後に決めています。最近時間治療という概念が出てきて、薬を飲む時間が重要となっているようです。

病気によって症状が悪化するタイミングが異なるため、その時間に合わせて服用すれば効果が高まるとしています。この考えは生体リズムという、体に元々備わっている仕組みを臨床の現場に取り入れ、薬物療法に生かすという非常に画期的なものです。

生体リズムの研究自体は古くからおこなわれており、すでに300年前に興味深い報告がなされています。植物のオジギソウの葉が、約24時間周期のパターンで動き続けるということが発表されたのです。

その後植物、動物および人間を対象に研究が続けられ、生体リズムのメカニズムが科学的に証明されました。1950年代に入ると、生体リズムの概念を取り入れた医学研究である時間医学が盛んにおこなわれるようになり、それが体系化されて時間生物学という学問が確立しました。

こうした生体リズムにおける研究は、疾患の診断面のみならず治療面においても進歩をもたらしました。具体的には血中薬物濃度や薬物有害作用に及ぼす投与時刻の影響を研究する時間薬理学が発展しました。

さらに時間薬理学研究から得られた情報と、疾患における日内リズムの特徴を考慮に入れ、患者一人一人に最も効果のある、そして安全なタイミングを狙って薬を投与する時間治療が行われるようになったのです。

このような時間治療研究の成果は少しずつ臨床の場に取り入れられるようになり、いまでは医薬品の添付文書などに投薬時刻の指示が記載されたりしています。この時間治療の例として、高血圧の治療に用いられるACE阻害剤について紹介します。

この薬の有害作用のひとつに空咳があり、原因として血中のブラジキニンと名付けられた物質が増加することが指摘されています。

この咳の訴えが患者から出て調査したところ、この薬を朝投与したところ空咳がでたものの、夜の投与に変更すると血中ブラジキニンは増加せず、咳は出なかったのです。

もう一つの例として、肝臓で悪玉コレステロールを分解する酵素の働きを高めるプロブコールという薬の問題です。この薬は効果は少し弱めですが、抗酸化作用という特徴があり、コレステロール低下作用が強ければメリットは大きなものになります。

実際にこの薬を朝投与されている脂質異常症の患者に、夜の投与に変更したところ血中のコレステロールはより低下しました。

このように適切な投与時間の設定という、時間治療が有効なケースは多いようです。