ごっとさんのブログ

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「老い」をブロックする酵素

2020-11-17 10:28:55 | 自然
日本の高齢者の割合は世界最高であり、第2次ベビーブーム世代(1971年〜1974年生まれ)が高齢者となる2040年には、その数値は実に35%を超えるとされています。

熊本大学の発生医学研究所のグループが、体内の細胞の老化をブロックする「NSD2」という酵素と、その働きのメカニズムを解明したと発表しました。

「老化」とは主に成長期の後に訪れる、身体の生理機能の低下を意味します。似た言葉に「加齢」がありますが、こちらはヒトが生まれてから死ぬまでの時間の経過のことで、誰もが一定のスピードで進行します。

これに対し老化のスピードは決して一定ではなく、その人に備わった遺伝子と外部環境によって変化していくものです。この老化にも「個体老化」と、およそ60年前に米国の研究者によって発見された「細胞老化」の2種類があります。

個体老化は一般にイメージされる老化で、細胞老化は細胞の不可逆的な増殖停止を指します。細胞の老化は、紫外線や薬剤などの物理的・化学的ストレスによってDNAが損傷を受けることで促進され、こうした細胞は老化細胞と呼ばれ、実際に個体老化で増えてきます。

実際にマウスを使った実験では、老化細胞を除去すると老化が遅くなるという研究結果が報告されています。一方老化細胞はガン化を防ぐという役割もあるようです。

良性腫瘍の中に老化細胞が発見されたのは15年前で、ガンの遺伝子が活性化してガン細胞になり始めると、その細胞は老化して増殖を止めているのです。研究グループは、エピジェネティクスと呼ばれる観点から、遺伝子のオンオフを切り替える研究を進めていました。

特にその中で繊維芽細胞と呼ばれる、ヒトすべての組織・器官に存在する細胞種を調べ、老化にかかわる因子をスクリーニングし、老化のプログラム解明を進めてきました。これまで20種ほどの因子を同定し、その中で「NSD2」酵素を見出したものです。

この酵素は細胞増殖にかかわる遺伝子に働きかけ、増殖を調整しており、この酵素の量が減少すると増殖を停止して老化することを突き止めました。実際繊維芽細胞でNSD2酵素の働きを抑える実験を行ったところ、細胞の増殖が止まって一気に老化が進むことが分かりました。

遺伝子のオンオフを切り替えるエピゲノム酵素は、その量や働きを人為的に増減できるものではないようです。つまり増えてるからといって老化が防げるものではないようです。

ただしこのエピゲノム酵素全体を活性化する方法はあり、細胞内のミトコンドリアを活発に働かせることです。具体的には「運動」「空腹」「適度な寒さ」の生活習慣が効果的なようです。

ここに空腹が入るのは面白いのですが、結局身体を動かし間食はせず空腹になったところで食事をとるという、普通の生活が老化を遅らせることになりそうです。