ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

うつ病治療に新たな「コイル電流」療法

2020-11-10 09:45:00 | 健康・医療
現在うつ病で医療機関にかかっている患者は全国で100万人以上とされています。

治療現場でも新たな動きが出ており、中等症以上の患者に行われてきた「磁気」による治療が昨年6月から保険診療で受けられるようになりました。

うつ病の治療法はこれまで抗うつ剤による薬物療法、認知行動療法などの精神療法が主体でした。それでも2〜3割の患者には効果が見られず、重症患者には「電気痙攣療法」も施されてきました。

そこで第4の治療法として注目されているのが「経頭蓋磁気刺激(TMS)療法」です。米国では2008年に認可された治療法であり、磁気を生成する装置を頭部に当てコイルに電流を流します。

頭皮から深さ2センチの部分に渦電流が生じ、認知機能を司る「前頭前野」にある神経が刺激されることで、健康な人の活動バランスに戻る効果が期待できるものです。昨年保険適用となったのは、TMS療法のうち「rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)」という方法です。

現在国内では一生のうちうつ病にかかる割合は約7〜8%ともいわれており、日本うつ病学会のガイドラインでは、中等症以上の患者に対しては薬物療法を行う方針が定められていますが、薬の効果がない患者が3分の1ほどいるようです。

具体的な手順としては、左側の額の部分に10ヘルツ(1秒間に10回)の周期で4秒間の磁気による刺激を与え、26秒の間隔を開けて75回繰り返します。1回の治療の所要時間は約40分で、合計3000回の刺激を前頭前野に与えます。

標準的な治療ではこの40分間の刺激を週に5日、3~6週間続けるようです。1回の技術料は1万2千円で、3割負担なら3600円で受けられます。うつ病は症状の重さを点数化して評価し、症状がほとんどなくなるかほぼ正常に戻れば「寛解」、半分以上改善すれば「反応」と呼んでいます。

臨床試験では約4割が寛解しています。このrTMS療法を行うことで、セロトニンや興奮系ホルモンのノルアドレナリン、快楽ホルモンのドーパミンなどの神経伝達物質の分泌が増えるようです。

抗うつ剤の場合はまず脳の奥にある偏桃体の活動を正常化させ、次に外側にある背外側前頭前野の機能を挙げるというボトムアップ式で効果が出ますが、rTMSの刺激は頭皮から2センチの深さしか刺激できません。

抗うつ剤とは順序が逆で、まず表面に近い背外側前頭前野を刺激して機能を上げ、さらに過活動になっていた側頭葉内側の働きをコントロールするというトップダウン式の効き方を見せるのが特徴です。

この療法による寛解率が4割というのはやや低い気がしますが、難しい脳の病気ですので、この程度効果が出れば有効な治療法といえるのかもしれません。