携帯電話業界ブログ

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シャープ、海外で携帯電話事業加速 スマートフォンを欧米展開 中国にも新機種投入

2010-04-14 |  シャープ



 シャープは携帯電話事業の海外展開を加速する。米国を手始めに欧州市場には米マイクロソフト(MS)と共同開発した新型スマートフォンを投入。

 中国市場では第3世代(3G)携帯電話約10機種を発売する。シャープは「アンドロイド」のほか、「シンビアン」、「KCP+」といったOS対応の端末も手掛けている。

 市場にきめ細かく対応する戦略だが、開発リソースの配分が課題になりそう。


●欧米で巻き返し

 「サイドキック以来の付き合いだ」。12日、サンフランシスコで開いたMSの発表会の席上、MS幹部とシャープの大畠昌已執行役員はMSとの蜜月ぶりをアピールした。

 サイドキックとは、シャープが04年に米デンジャー社向けに開発したスマートフォン。5月に発売する「KIN(キン)」のOSは、スマートフォン用OSである「ウインドウズフォン7」の技術基盤の一部を利用して開発。

 シャープは手のひら大の端末開発のために、プロジェクトチームを作って対応。携帯電話端未開発で培った高密度実装技術で小型化を実現した。

 キンは、片手ですべてのキーボードを押せるデザインにするなど設計上の制約が多く、シャープだけが設計・製造会社として残った模様。

 北米では携帯電話大手ベライゾン向けに、欧州ではボーダフォン向けに投入、今秋からドイツ、イタリア、スペイン、英国でそれぞれ発売する。

 シャープはここ数年、欧米の携帯電話事業を縮小していたが、今回のスマートフォン投入によって巻き返しを狙う。


●中国に3G端末10機種

 シャープは新興国市場の開拓に向けて、第2世代や3Gの端末開発にも力を入れている。

 13日には、中国北京市で菅野信行・常務執行役員が新端末を発表し、年内に3G端末を前年比5倍の10機種発売すると表明した。

 今回の機種投入では3G機種を4機種投入。一方で、2000元(約2万7000円)以下の普及帯でも新機種を追加。ハイエンドからローエンドまでフルラインアップで商品展開を進める。

 今年に入ってから既に3機種が発売済みで、最終的には年末までに20機種程度に達する見通し。同社は08年は3機種、09年は10機種を投入しており、モデル数の拡充を加速する。

 スマートフォンも今夏に投入する予定で、現在0.1%に留まる3G端末のシェアを10%まで伸ばしたい考え。

 また、「2010年末までに携帯電話販売店を現状の5割増の1万店まで増やす」とも発表。内陸部や中小都市を中心に販売店を増やすほか、携帯電話専売店に加え、家電量販店での販売も拡充する。

 中国でのシャープの携帯電話の販売台数は約100万台。徐々に「アクオス」ブランドが浸透しており、日本で発売した端末の開発リソースを活用しやすい強みがある。

 シャープの09年度の携帯電話販売計画は1070万台。そのうち国内販売が910万台を占め、海外販売は160万台に留まる見通し。

 10年度の海外販売比率は、09年度の15%から3割程度まで高める意向。


●海外での巻き返し図る

 問題は開発の体制。ウィンドウズフォンやアンドロイドといったスマートフォン向けOSは機能強化を競っており、端末メーカーがOSの進化に追随するために開発要員をそろえる必要がある。

 KDDIが6月に発売するシャープ製スマートフォンのOSはアンドロイド。シャープは国内端末向けにシンビアンやKCP+などのOSを搭載した端末も手掛けており、戦線が延び切る懸念もある。

 とはいえ、日本国内の携帯電話市場が縮小するなか、海外で確実に駒を進めているのはシャープだけ。最新OSの開発は不可欠。

 シャープの海外での巻き返しは、片山幹雄社長が就任以前から温めていたプロジェクト。

 日本携帯電話は、NTTドコモなどのが開発、販売までを手掛ける通信会社主導だっため、戦略上の制約があったが、今後はMS、アップル、グーグルなどの世界標準に準拠して海外市場での巻き返しを狙う。

 海外のOS会社と組むことで、日本のセットメーカーも特定の通信会社に縛られない独自ブランドの端末を世界展開する環境が整いつつある。





【記事引用】 「日経産業新聞/2010年4月14日(水)/3面」
         「日本経済新聞/2010年4月14日(水)/11面」
         「日刊工業新聞/2010年4月14日(水)/8面」


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