髭のプーサン日記

日本ハムファイターズを中心にスポーツ全般の観戦日記です。
ときおり姓名判断でのお名前に関することを書いています。

神秘の家(2)

2006-11-23 00:27:54 | 九占舎



2)
その事件というのは突然の災難が私に襲い掛かったのです。
逃げるテツオを追いかける彩子先生の顔は紅潮し、目は怒りに燃えていました。
クラス全員が今一体何が起こっているのかも把握できないのは、余りにも予想も出来ない展開が現実に目の前で起こったからでしょう。
そのような中なぜか私は机と机の間に出来た細い通路に、両手を広げ「通せんぼ」をしている私がいました。
数十年たった今でも当時ひ弱で目立たない私が、何かに誘われるように立ちふさがった理由はわかっていません。
テツオは「邪魔だぁ、どけ」と叫んだように思いますが、記憶は定かではありません。


覚えているのは彼の振りかざした右手が、私の頭部にガツンといった強い衝撃を与えたところで意識は朦朧としその場に崩れ落ちたこと位です。その時は痛いという感覚もなく、頭部全体がしびれた状態だったのでしょう。
確か相当量の血が頭部から噴水のように噴出したはずです。
「どうして血が出るの?」と心の中で呟く私の声と、遠退く意識の中で「きゃー」と叫ぶ女子生徒の声と、遠くで彩子先生の「○○君しっかりしなさい!!」とが交錯し、「あぁとんでもない事になったんだ」と思ったのですが、その時点で意識はまったく無くなりました。
気が付くとそこは職員室の片隅に置かれた緊急ベットの上でした。心配そうに校長先生以下数人の先生達の顔が写りました。
頭はまるでミイラのように包帯でぐるぐる巻きとなり、絶えず頭全体には脈打つごとに強烈な痛みが走ります。
「もう少し我慢をしてね!!まもなくハイヤーが来るから」と彩子先生の声が足元から聞こえました。
私が「何が起こったの?」と無言で校長先生に問いかけると、私が言いたい事を察したのか「鉛筆が頭に刺さったんだよ。痛いだろうけど我慢をしなさい」と優しい言葉で教えてくれました。
「鉛筆?頭?」どうりで顔には拭き取り残した血が乾いてつっぱった感じがするし、ズッキン・ドックンという痛みはますますと激しくなってきました。

この鉛筆事件がその後7年間にわたって私を大いに苦しめることとなるのですが、この時は
「早く病院に連れて行って!!」と心で叫ぶしかありません。
ようやく職員室の外でハイヤーが止まる音がして「バタン」とドアが閉まる音がしました。
当時はまだ救急車もなく街まではかなりの距離があったので、交通手段はバスかハイヤーを利用するしかなく、私にとってこの時が始めてのハイヤー経験であったのは言うまでもありません。