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信濃毎日新聞掲載記事 地域医療をどうする

2008-01-24 02:46:36 | 新聞記事
信濃毎日新聞掲載記事/20080113/朝刊/総合3
地域医療をどうする 医師確保、取り組みは 県内行政・医師・大学の3氏に聞く

 県内各地で病院などの勤務医不足が表面化、産科など診療科の休廃止や患者の受け入れ制限などの影響が出ている。立て直しに向けた道筋をどう見いだしていくのか。行政、医師会、大学病院それぞれの
立場での取り組みを聞いた。

[県衛生技監 桑島 昭文氏]

<資金貸与、効果少しずつ>

 県内で産科など診療科の休廃止がここまで相次ぐとは正直、予想していなかった。昨年一年間で十-の病院が十四診療科を休廃止した。昨年末には国立病院機構長野病院(上田市)で産科医引き揚げ問題が起きるなど、今後の予測が付けにくい状況だ。
 県は、即戦力となる医師のほか、研修医や医学生の確保など、できることはなんでもやろうと考えている。県外から県内に就職する医師を対象にした研究資金貸与制度は六人が利用するなど、少しずつ効果は上がっている。だが、即効性は見込みにくい。
 県の検討会は昨年三月、「緊急避難」として産科九ヵ所、小児科で十力所の連携強化病院を選定し、医師を集約化することを提言した。危険なお産や救急搬送を二十四時間態勢で受け入れる病院がなければ、地域の診療所も安心してお産を扱えない。連携強化病院を「砦(とりで)」として守らなければならない。
 住民の安心には、病院や診療所、介護施設などが連携し、救急からリハビリ、介護まで地域で完結する医療体制が理想だ。長野県は長寿県でありながら医療費が低い。この特長を地域医療の魅力として全国に発信し、医師確保に役立てたい。

[県医師会長 大西 雄太郎氏]

<患者側の協力も必要に>

 国や県は医師不足対策として医学部の定員を増やしたり、医学生の奨学金制度を設けたりしているが、効果が出るのは十年先だ。これ以上、病院に勤務している医師を減らさないことが何よりも重要だ。
 そのためには、医療を受ける県民の協力も必要になる。
 「夜中だろうと、医者が患者を診るのは当然」という態度で、病院をコンビニ工ンスストアのように利用する人が増えた。夜中に診察に訪れる人の八一九割は、翌日でも構わないケースだ。その上、「誤診をしたら訴える」などと言われる。結果として、訴訟のリスクが高い産婦人科や、症状の変化が早く診察が難しい小児料などを選ぶ医師が少なくなっている。
 緊急的な対策として、産婦人科や小児科、麻酔科医の報酬を上げて待遇を改善し、辞めさせないようにする必要がある。病院経営者が医師の手当を増やせればよいが、診療報酬のマイナス改定が続き、経営は苦しい。県や市町村からの助成、出産費用の値上げなど、県民に負担してもらうことも必要になる。
 県民も何ができ、どこまで我慢できるのか。医師と悪者双方の歩み寄りがなければ解決のめどは立たない。

[信大病院長 勝山 努氏]

<大学病院、競争力向上を>

 勤務医不足の原因が、医師養成数の抑制や勤務医に不利な診療報酬改定など、国の医療政策にあったことは事実だ。ただ、厚生労働省だけの責任ではない。
 反省すべきは、大学医学部が国の政策決定にほとんど発言してこなかったことだ。きちんと声を上げ、制度を修正していればここまでの事態にはならなかった。
 二○○四年度からの新臨床研修制度は、前近代的な医師の教育、供給システムの改革が狙いだ。確かに大学病院に残る研修医が滅り、各地の病院への医師の継続的な派遣が難しくなっている。だがそれは、地方の大学病院が一般病院や都会の病院との競争に負けているからだと言わざるを得ない。大学病院としては、臨床研修の充実を徹底する以外に選択肢はない。
 信大病院は「卒後臨床研修センター」を設け、専任教員として医師一人、看護師二人を配置。各診療科も研修プログラムの充実に努めている。医師と同様に不足が深刻化している看護師の研修体制も整えている。
 教育や研究も大学の役割だが、地域住民が期待する最高の医療を提供し、それを支える人材を養成することも重要だ。大学病院としての競争力を高めていきたい。

 【くわしま・あきふみ】
 県衛生技監。1990年、厚生省(現厚生労働省)入省。同省健康危機管理官を経て2007年4月から現職。富山市出身。45歳。

 【おおにし・ゆうたろう】
 県医師会長、干曲中央病院(干曲市)理事長。同会常務理事を経て2006年4月から現職。干曲市出身。72歳。

 【かつやま・つとむ】
 信大病院長。1992年同大医学部教授。2003年7月から現職。専門は外科病理学。松本市出身。64歳。









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