気儘に書きたい

受験勉強よりもイラストを書くのが好きだった高校生の頃---、無心に絵を描く喜びをもう一度味わえたらいいのだが。

四国旅行Ⅱ

2013-05-29 09:26:12 | 写真
大塚国際美術館は、大塚製薬グループが創立75周年事業として鳴門市に設立した、常設展示スペース294124㎡、展示作品数1000余点という国内最大級の美術館だ。1998年の開館までに展示物を入れて550億円の費用をかけたらしいが、オロナイン軟膏に始まり、オロナミンC、ポカリスエット、等で得た莫大な利益を創業の地に還元するという意味があったのだろう。山を繰り抜いて作った地下5階、地上3階の建物は㈱竹中工務店が請け負って施工したが、難工事で大赤字となったらしい。
余談だが私の商売も古くから大塚グループに関わってきた。徳島は漆を使った座卓や鏡台の産地として歴史があり、大塚化学工業の系列に家具製造部門が設けられた。座卓、鏡台でシェアを拡大するうちに、製薬のノウハウを活かして25年間防虫剤不要の婚礼タンス「銀婚」を開発し、テレビCMを流して全国的にヒットさせた。大塚グループはアイデアを活かした商品の開発が的確かつ迅速で、マスメディアを駆使した宣伝も常に先を走っている。(因みに家具小売の大塚家具は大塚グループと何ら関係ない。)
昭和の終わる頃、大塚化学の私の店の担当者が転属となった。若い人のライフスタイルが変わって、婚礼セット、鏡台、座卓が売れなくなり、主力のダイニングセットは海外で製造するようになって、家具部門が大幅に縮小されたのだ。担当者の配属先の陶板事業部は、鳴門海峡の浚渫砂を原料にした陶板に特殊技術を使った写真を転写して焼き上げた肖像画を受注販売する仕事だった。私の母が亡くなった時、8号くらいの肖像陶板を作ってもらったが、一般のユーザー価格で20万円程かかったようだ。
 大塚オーミ陶業㈱の技術により、世界25ヶ国190余の美術館が所蔵する作品を現地で調査、写真撮影し、同じ大きさで複製した作品群は、陶板故に、2000年以上も変色せず、触ることも写真撮影することも許されている。

(スクロヴェーニ礼拝堂)

スマホを頼りに漸く大塚国際美術館に辿り着いた。車は海岸沿いの広大な駐車場に停めてシャトルバスに乗らなければならない。美術館の正面玄関を入ると長いエスカレーターがあり、地下3階から展示が始まる。鑑賞案内の矢印に従って館内を進んだ。
 最初に見る「システィーナ・ホール」のミケランジェロの壁画に先ず圧倒される。「エル・グレコ」の部屋では、世界中に散っているキリストの生涯を描いた5枚の作品を大きな祭壇衝立に収めたものが圧巻で、金色に輝く祭壇はイタリアで1億5千万円をかけて特注したという。
最近話題となったフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」はここでも人気があり、原画の細かくヒビ割れた頬の絵の具の状態まで再現されていた。
 各作品には絵の由来などの詳しい説明が掲示してあり、古代の作品群をじっくり鑑賞するうちにギリシャ神話の世界に浸っていく。
 中世の作品群の展示コーナーに辿り着く頃には、幼い子供の泣き声が所々聞こえてきた。子供には退屈極まりないだろう。
 妻が「疲れた」と言うので、「ベンチに座ってれば…」と突き放して、マイペースで鑑賞を続けた。
 妻は私のペースで全部を鑑賞するのは時間的に無理だと確信したのだった。


(ラファエッロ「アテネの学堂」)


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