気儘に書きたい

受験勉強よりもイラストを書くのが好きだった高校生の頃---、無心に絵を描く喜びをもう一度味わえたらいいのだが。

大衆酒場、すえみつ屋

2019-09-30 23:27:54 | 風景画

店舗併用住宅で暮らしていた幼い頃、買い食いする楽しみを姉から教わった。店の名前は知らなくても、「ヤキーイモのおばちゃん」「カントニのおばちゃん」で通じた。近くの小原市場には子供向きの駄菓子屋やお好み焼き屋があり、お金を持ってなくても、豆腐屋や魚屋、肉屋、野菜屋、佃煮屋、味噌屋、乾物屋、等いろいろな仕事を見るのが楽しかった。市場のど真ん中にあったお好み焼き屋は私のお気に入りの店で、痩せた女主人が焼くネギとモヤシだけの薄っぺらのお好み焼き(昔の一銭洋食)を二十円くらいで食べることができた。関東煮(当時、おでんと言わなかった)も売っており、小さなじゃがいもを半分に切って3個串に刺したものが好物だった。お好み焼きは他店で浮気するようになっても、関東煮はここが一番だった。

義父がまだ叔父だった頃、父が亡くなった私たち姉弟を不憫に思い、よく外食に誘ってくれた。カウンターで食べる鮨、網でやいてタレをつけて食べる焼肉、初めて経験する大人の味だった。近所の「すえみつ屋」に連れて行ってもらったときは、居酒屋のような雰囲気に違和感があったが、お勧めの関東煮は絶品だった。大きな鍋の中央に味噌味のタレの入った器があり、串に刺した関東煮をタレに潜らせて食べる仕組みだった。初めて食べた味噌おでんだった。