あまでうす日記

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神奈川県立近代美術館鎌倉別館「リニューアル・オープン記念展」をみて

2019-11-09 13:31:15 | Weblog


蝶人物見遊山記第320回 & 鎌倉ちょっと不思議な物語416回



秋晴れの好日、観光客で一杯の八幡宮から足を伸ばして久し振りに訪ねてみましたが、平日の午後とはいえ私以外の入場者は新設のカフェを含めて皆無。このような状況は改装前とほぼ同様でした。

つまりここにこういう立派な施設があって、立派な展覧会が開けれているということを、地元の鎌倉市民はもちろん神奈川県の住民にも依然として広く認知されていないということですね。神近美の「葉山館」もそうですが、もっともっと広報に力を入れてPRと動員を図る必要がありそうです。

さてここは、以前は入り口で鎌倉市の老齢者のための「福寿手帖」を差しだせば無料で入場できたのですが、「300円寄越せ」と言われたので頭にくる。
一般の入場料が600円なので半額になるのは喜ばしいが、実質的には値上げです。一般の入場料も、確か以前は300円だったのではないか。とかく世知辛い世の中です。

さて入場してみると、会場正面に松木俊介の「立てる像」と古賀春江の「窓外の化粧」がどーんと陣取っていて見応え充分。その他岸田劉生の麗子像とか萬鉄五郎の「日傘の裸婦」、高橋由一の「江の島図」など、“当館を代表する不朽の名品”が並んでいるのですが、これらことごとく昔からここで何度も見慣れてきた“毎度お馴染みの品々”であり、幸徳秋水の甥、幸徳幸衛の「風景」を除くとわたくし的にはなんの目新しさもありませんでした。

それと、驚いたことには壁が木から普通の白に変わっている。いまどきの美術館はバックは大体白壁なのですが、ここだけは木の生地の温かな感触に目と心と身体が包みこまれるような気がしてほっと寛げたのですが、まことに勿体ないことをしました。大枚はたいた改装がそんな愚かな工事代に消えたとするなら、勿体ないだけでは済みません。

なんでも今回のオープニングテーマは「ふたたびの近代」ということで、もう一度近代および近代の芸術にについて考えてみようということなんだろうけど、そんなのは一部インテリゲンチャンが深夜の書斎でジュゲムジュゲムしていればいい専門家的観念的選良哲学青年的的高踏的抽象的エラソオな発想であって、わいらあ一般市民にとっては、勝手にやっとくれ、というような話ではないでしょうか。

そりゃ収蔵品が幕末から現代ちょっと手前までのいわゆる「近代」に該当するから、そういう麗々しい仕儀になったことは分かるけど、だからというて「近代再考」をそのままナマな形で丸投げするのは芸がなさすぎる。抽象と具体をしっかりつなぐ言葉を閑古鳥が鳴いて暇で暇で仕方がなさそうな学芸員に10個づつ提案させる、などの汗臭い努力を積み重ねてもらいたいものです。

最後にこの建物を「鎌倉館」といわずに「鎌倉別館」と称呼し続けているのは、八幡宮に譲り渡した旧館とは別に、新たな本館をつくる計画があるからなのでしょうか。いろいろ複雑な気持ちに襲われた訪問でしたあ。

なお同展は、来年の1月19日まで寂しく開催ちう。



   大和市の深見の辻の「久久」はタケちゃんが作るラーメンが旨い 蝶人


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