あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

美しい10代

2024-08-12 09:55:06 | Weblog

 

これでも詩かよ 第317回

 

 

第3次世界大戦で、またしても廃墟と化した帝都の焼け野原を、

2つの影法師が歩いていく。

 

ラララ、2人だけの野道だ。ラララン、2人だけの夜道だ。

知り合ってまだ日も浅いのに、いつの間にかぼくらは手をつないで 

道なき道を、ゆっくりと歩いていく。

 

掌に汗が滲んできたのが気になって、ぼくは彼女の手を一回だけグッと握りしめると、

彼女も一回だけグッと握り返してきた。

 

「しめた!」と思って、今度は間をあけて2回連続でグッ、グッと握りしめると、彼女も2回連続でグッ、グッと握り返してきた。

 

「やったぞ!」と思って、今度は間をあけて3回連続でグッ、グッ、グッと握りしめると、彼女も3回連続でグッ、グッ、グッと握り返してきた。

 

「超ウレピイな!」と思って、今度は回数を間違えないようにイチ、ニー、サン、シーと頭の中でカウントしながら、10回連続でグッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッと握りしめると、彼女も10回連続でグッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッ、グッと握り返してきた。

 

それからぼくたちは、生まれてこの方、これ以上の幸福な瞬間がなかったかのように、すっかりうれしくなって、暗い野なかの一筋の道を、手と手をしっかり取り合って、

どこまでも、どこまでも、歩いていったのでした。

 

常に常にわが見解は容れられず賛成多数の原案が通る 蝶人

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする