照る日曇る日 第2087回
「神部」となっているが、我が懐かしの郷里「綾部」を舞台に、「ひのもと救霊会」ならぬ「大本教」が、国家権力の弾圧によって壊滅的な打撃を蒙っていく哀しい物語を、しみじみと再読している。
あんなに若くして教壇を去った高橋和巳を、前途有為な中国文学研究者としての未来をみずから放棄した得体の知れない小説家、として遠くから冷たく眺めていたおらっちだったが、「朝日ジャーナル」への連載が始まった本作を読んで、自分が熟知していたはずの郷里と宗門の生々しい真実の姿に、初めて触れたような衝撃を覚えたのだった。
綾部とは、結局大本教の出口なおと、郡是の波多野鶴吉の町なのである。
自らの旗も誇りも投げ捨てて米国の犬がワンワン吠える 蝶人