あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

岸政彦著「断片的なものの社会学」を読んで

2024-08-25 10:02:52 | Weblog

 

 

照る日曇る日 第2094回

 

多くの人々とインタビューを行いながら、いわゆるひとつの「社会調査」、つまりインタビューを行っている著者の摩訶不思議な人世読本なり。

 

パラパラとめくりながらいくつかのパラグラフを引用してみようか。

 

「私には幼稚園ぐらいのときに奇妙な癖があった。路上に転がっている無数の小石のうち、どれでもいいから適当に拾い上げて、何十分かうっとりとそれを眺めていたのだ。広い地球で「この」瞬間に「この」場所で、「この」私によって拾われた「この」石。そのかけがえのなさと無意味さに、いつまでも震えるほど感動していた」

 

「「誕生日は1年に一度必ず全員に巡ってくる。何もしないでその日を迎えただけなのに、それでもおめでとうと言ってもらえる。誕生日とはそういうことだったのである。」

 

「私たちは他の誰かとセックスしているときでも、相手の快感を感じることはできない。抱き合っているときでさえ、私たちはただそれぞれの感覚を感じているだけである」

 

「ある種の笑いというものは、心のいちばん奥にある暗い穴のようなもので、なにかあると私たちはそこに逃げ込んで、外の世界の嵐をやりすごす。そうやって私たちは、バランスを取って、辛うじて生きている」

 

社会学者の仕事は、それらの聞き取りを分析したり、解釈したりすることだが、どうしても「分析できないもの」をアトランダムに並べた本書と、その主人公の心映え、が読者の心に殷々と響くのはどうしてだろうか。

 

    杉浦の友紀アナが抜けてからあの番組はじつに詰まらん 蝶人

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