照る日曇る日 第2095回
どんな戦争にも反対と公言する「絶対非戦論」の著者が、ドストエフスキーや夏目漱石の「戦争観」を、文芸評論として深追いしながら、激しく考え続けた論考を読みました。
さりながら「戦争とは何か」という表題にもかかわらず、その冒頭の切迫した問いかけに直接答えているのは最後に書かれた「あとがき」だけ。その途中におかれた古今東西の思想家の膨大な引用や、それらに関する著者の言説は、無知で無学な小生にはとても勉強にはなりましたが、かなり強引で素直にうなずけない牽強付会の説(特に「修善寺大患」への過大な思い入れ)が多く、小生の浅はかな大脳前頭葉はかなり激しく戸惑ったようでした。
考えてみれば文芸評論は文芸評論、戦争論は戦争に関する論述なので、2つを無理やりひとつにしないで書いてもらった方が分かりやすかったような気がします。また本書は、過去にどこかに発表された5つの論考の、改稿とはいえ寄せ集めなので、全体的な統一感が醸し出されにくかったのではないでしょうか。
それから著者は、小林秀雄、吉本隆明、柄谷行人の3名を所謂「絶対非戦論者」として取り扱っているようですが、果たしてそうなのでしょうか? 柄谷はともかく、吉本とりわけ小林秀雄をその範疇に入れてしまうのはどうかなあと、思わず考え込んでしまいました。
クワガタやスズメバチを押しのけて樹液を貪るオオムラサキ 蝶人