行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

【日中独創メディア・中国雑感】官僚の〝宴会死〟が増えている

2016-01-10 22:32:32 | 日記
中国で「聚餐死(宴会死)」という言葉が使われ始めた。主として役人について用いられる。

昨年2015年の大みそかには中国国防省が定例記者会見で、人民解放軍の済南軍区第26軍軍長(司令官)の張岩氏(51)が以前の部下と酒を飲んで、部下を死なせたとして、降格、免職処分を受けたことを認めた。ネットではすでに半月前から情報が流れていた。どこの国でも軍人の酒量は尋常ではないが、これもまた宴会死の一種である。

張岩は父親、義理の父親とも軍幹部で、2014年10月、習近平中央軍事委主席が最年少の軍長として抜擢した。戦車部隊出身でロシア語も堪能で、優秀な軍事評論家としても知られていた。東北地方の瀋陽軍区第39軍参謀長時代はロシアとの合同軍事演習で指揮を執った。宴会死事件の後、将来の栄達に支障が出るのを心配し、情報を隠蔽して遺族との示談を進めたことが上層部の怒りを買った、とネットでは指摘されている。部下の飲酒死だけで、一生を棒に振るような処分は考えられない。軍内の規律引き締めを行っているさなか、エリート軍人自ら規律を無視したことに、習近平はさぞ怒ったに違いない。見せしめとして厳罰が下されたのである。

そして本日10日、事件の起きた山東省の済南市党委機関紙『済南日報』が「また役人が宴会死した!公務の招宴はどうやって参加すればよいのか?」と見出しのついた記事を発表した。6日には、広東省潮州市道路局幹部の宴会が昨年末、山の上で開かれた際、酒に酔った王蘭亭・同副局長が崖で小便をしようとして滑り落ちて重傷を負い、その様子を見に行った技官の黄悦生氏が同じように滑って死亡した事故の処分結果が発表されたばかりだ。

メディアに報じられている不完全な統計によると、2012年11月の第8回党大会後、役人の宴会での死亡事故は14件に及び、うち6件が公用で、3件が個人的な活動、3件が民間業者からの接待、1件が歓迎会、さらに上司の幹部が旅行をし、部下は公費宴会をしていたケースだった。安徽省泗県農機局では一昨年から昨年にかけ同様の宴会死が相次いだ。2014年10月には、同局幹部4人が地方視察で接待を受け、5人で5本の白酒を飲み、飲酒運転で現地の幹部が死亡。2015年5月には同局幹部が同じく地方で接待を受け、4人が2・5リットルの白酒を空け、うち1人がアルコール中毒で死亡した。いずれも接待した側が犠牲者で、同局幹部の1人はどちらの宴席にも参加しているというから驚きだ。

習近平政権は、行政の簡素化や倹約を求めた風紀改善「八項規定」で接待の簡素化を求めており、宴会死はしばしば同規定の違反事例の中で起きている。当事者が事態をもみ消そうとし、水面下で賠償金交渉をしているケースも多い。

中国の長い歴史の中で根付いた酒席文化を簡単に断ち切ることは不可能だ。役人の腐敗、堕落、贅沢と酒席をすぐさま結びつけるのも短絡的だ。公式の酒席にはそれを楽しむための厳格なルールがあり、私的な宴席にはそうしたルールを気にしない気楽さがあったはずだ。権力を笠に着て、パワハラまがいに酒を強要するのは、本来の酒席マナーにはない。わずかな権力を振るいたいがために、分不相応な高級酒を並べ、参加者を酔い倒させるために酒席を利用するのは、酒飲みの風上にも置けない。

習近平は接待の禁止や禁酒を強要する前に、酒の飲み方のマナー講習でもしたほうが良い。酒を愛し、詩を愛し、交友を愛した人生の芸術の伝統を、一握りの不届き者に台無しにされてはたまらないはずだ。

同じく酒を愛する者としても許し難い。酒仙の響きを汚してはならない。