震災後の日本と世界

2011-09-22 11:16:11 | Weblog
震災後の日本と世界

皆様のご清栄をお慶び致します。
さて、東日本大震災・原発事故以降は、正に日本の従来の経済・社会構造講やシステムは、音を立てて崩れ去り、新しい社会・経済構造の創造へと急展開しているように思われます。
その顕著な例は、トヨタの中国やインドネシアへの投資や進出ラッシュであり、パナソニックのシンガポールへの本社機能の重要部分の移転である。
その他、製造業においてはもとより、コンビニのセヴンイレブンのインドネシア進出など小売業分野での海外進出例も、はたまたM&Aによる海外大手企業の買収事例なども数え上げればきりがない。これら多くの企業の海外進出を支援する大手都市銀行の融資体制も、円高を理由に絶好のチャンスとみて極めて積極的だそうです。
以上のような全産業・商業分野を横断する海外進出の動きは、東日本大震災・原発事故後、早くも6か月を経過した時点で明らかとなり、今日ではますます大きな話題となって新聞紙上を賑わせています。
このような大きなうねりが、かつてのバブル経済と同じ運命をたどり、いつか崩壊して大けがを負う企業が後を絶たないといったサイクルに遭遇するのではないかと心配する向きもあります。
確かに、そういったリスクは否定できないでしょう。「満ちれば欠ける」のは、自然界同様に人間界でも同じでしょう。
しかし、大きなうねりは今始まったばかりです。これは数年近くは続くとみていいでしょう。また、リスク面ばかりを見て消極的選択に落ち込んでいると、需要の縮小傾向がはっきりしている国内で、やがて飢え死にを迎える危険も少なからずあります。
これら二つのリスクの間での比較衡量をしつつ、自己の企業の行く末を決定しなければならないでしょう。

ここでは海外進出に追いやられる主な理由を検討してみます。
(1)円高要因こそ、その寿命の長さが分かりませんが、
(2)電力不足などは、国内に54基もあるといわれる原子力発電装置が(すべて?)再生エネルギー利用の発電に取って代わられるまでには、相当な年数を要するでしょう。
(3)国内での企業活動に係る法人税などの課税率の突出した高さなども、日本ではなかなかシンガポール並みなどにまで低減化されることはないでしょう。
(4)工場や営業所立地の安さという点でも、労働者の賃金レベルといった点でも、若者人口の絶対的な多さといった点でも、インドやインドネシア・ヴェトナムなど、東南アジアほどの好立地はないでしょう。
(5) 逆に、日本では、少子高齢化・人口減少が、将来に向かってのほぼ確定した労働力不足や消費マーケットの縮小を招くマイナス要因です。
(6) 世界一の観光国・フランスへの観光客数・年間8千万人とは比較にならない数百万人程
度と少なかったのに、日本には、更に外国人観光客が来なくなりました。
東日本大震災・原発事故以降、半年を経過したのに、未だに昨年比で3割も4割も減少しているのです。主な原因は、地震や津波被災ではなく、原発事故による放射能汚染の問題です。これが何年かかって除染による修復や安全性の確保がなされるのか、見当がつきません。10年単位での計算が必要なようにも言われています。
これでは、外国人の訪日客をも重要な対象にした観光関連産業は、今後も言語に絶する苦難に遭遇せざるを得ません。外国人留学生を対象にしている日本語学校なども総崩れの悲劇の真っただ中です。
そこで、こういった訪日外国人対象のインバウンド型の企業も、他の分野の企業同様に、海外に打って出て、新天地の海外拠点で新しいビジネスを早急に開始するしかありません。

かくて、内需型の業種や企業でも、国境を単に市や県といった行政区を分ける境界線ぐらいに軽く捉えて、今後のマーケットを見ていく必要があるでしょう。
ただ、ここで、市や県の境を越えて進出する場合でも、元来が地元マーケットでのみ事業を行ってきた中小企業にとっては、異なったエリアでのビジネスが、想定したよりも難しかったという体験をしたことは珍しくはないでしょう。
マーケットのサイズや顧客の文化性・嗜好などが、県境を越えれば微妙に異なっていることが、進出当初にはなかなか理解できず、思いがけないコスト高要因などが重なって、せっかくの進出もとん挫してしまうことも少なくはありません。
増してや国が異なれば、宗教・文化・風俗・言語・人種…などの多くの点で我が国の場合とは異なり、苦難の連続になるでしょう。
そこで、先ずは、日本人派遣スタッフやその家族など、在留日本人をターゲットにして、より早期に収益を確保しやすいビジネスモデルを作るべきでしょう。
率直に自己の強みと弱みとを直視しつつ、上記の収益モデルをシミュレーションし、経費率を低く設定できるなら、進出決定が可能になるでしょう。
また、失敗した場合でも、命取りには決してならない程度の予算・事業計画で臨むことも大事な知恵でしょう。
以上、皆さまのご勇断とご盛栄をお祈りします。

平成23年9月28日 水曜日
東京通訳アカデミー・理事長・岡村寛三郎
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