絵話塾だより

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2020年11月28日(土)文章たっぷりコース第 2回目の授業内容・高科正信先生

2020-12-02 16:38:20 | 文章たっぷりコース
この日は夕方JRのダイヤが乱れ、そのせいで私鉄の運行にも影響が出て、高科先生を始め生徒さんたちも遅れてくる方がいらっしゃいました。
そこで、授業はまったりと辞書についてのお話から始まりました。



最近(11月19日)三省堂の新明解国語辞典の第8版が出ました。
これには「コロナウイルス」や「ヘイトスピーチ」など最新の言葉も載っているそうです。
言葉は時代につれて変わっていきます。
例えば「恋愛」の定義も、以前は「特定の異性に対して」となっていたのが、最新版では「特定の相手に対して」に変わっているとか。
たくさんの人に使われると言葉は認知されていきますが、知らない言葉に出会う度に辞書を引いて
その意味を知るよう習慣をつけましょう。



次に井上ひさしの『にほん語観察ノート』(中央公論社)から「日本語上達のコツ」というところを見ていきました。
新聞の全国調査の結果では、多くの人が「筋道を立てて話したい」「いい文章を書きたい」と思っているそうです。
そのためには、面倒くさがらずに毎日辞書をめくって、言葉の数を増やし、同時にその使い分けを確めながら、
心の内に言いたいことを育てていくことから始まるのではないか、ということでした。



続いて、今期の教科書『書く力』(池上彰・竹内政明/朝日新書)を交代で読み継いでいきました。
今回は、①結論よりも、まずは書き出しに気をつけよう
②無駄を恐れず、冒頭から結論へのブリッジを見つける
③そのために「部品」の種類は多めに持とう の箇所について学びました。

書き出しの良い見本として、安房直子の『春の窓 安房直子ファンタジスタ』(講談社X文庫)から
童話『北風の忘れたハンカチ』(偕成社文庫)について言及しているところを取り上げ、
実際にその箇所を読んでみると、瞬時に主人公の熊の暮らす世界へ入って行けそうでした。
フィクションであっても、大切なのは現実世界の出来事のように、ありありと行っているように書かなければならなりません。
最初の一行がうまく書ければ、作者もその世界に定着することができ、すらすらと書き進めていくことができるし
読者もすっとその中に入っていけるのですね。
最初書き出しでつまずいても、そのまま書き進めて、後で振り返って書き直すこともできます。

テーマと書き出しが決まった後は、言いたい要素をふんだんに入れて一旦長めのものを書いてから、
半分〜3分の2程度になるように切っていく方が、文章が引き締まります。
要素とは、キーワードやネタなど何でも構いません。
一見関係ないことでも、読み手に興味を持ってもらうフック(とっかかり)になるかもしれません。
普段から自分だけの引き出しにそういう材料を溜め込んで、必要な時に引っ張り出すことを心がけましょう。

テーマが決まれば、とりあえず書いてみましょう。
書き進めていくうちに、書きたかったことはこうだったのだと分かるようになるのだそうです。
結論がはっきりしている文章もあるし、ぼんやりしているものがあっても良いのです。
ただし気をつけなければならないのは、対象読者をはっきりさせるということで
それによって言葉の使い方も違ってきます。
誰に向けて書いているのかを絶えず考えながら書くように心がけましょう。



そして、教科書の作者二人(池上氏と竹内氏)ともが、オチが想像もつかないと絶賛する
向田邦子さんの『眠る杯』(講談社)から書き出しの例を見ていきました。



「伽俚伽」というそのエッセイは、猫とお父さんの思い出を描いたものです。
展開が読めず、読み手を飽きさせない、うまい文章のお手本のようでした。



ここまで来て、課題が出ました。
「ぼくは(わたしは)〇〇です」という書き出しで、かな(平仮名・カタカナ)だけを使って
5歳の子どもに分かるような内容で、本文1200字の文章を書いて、次回(12月12日)の授業の時に提出してください。
必要なのは主語と述語の二つだけ、タイトルは書き出しと同じでなくてもかまいません。
日本語は一人称が多彩ですから、「ぼく」でも「わたし」でも「オレ」でも「アタイ」でも何でもかまいません。
そして、〇〇のところは生物でも無生物でも、何が主人公でも大丈夫です。
文章を「〜です」「〜ます」で終えるのを「敬体」、「〜だ」「〜である」で終えるのを「常体」といいます。
どちらを使っても良いですが、最後まで同じ文体で書きましょう。
提出する際は原稿用紙か、ワープロソフトで書く場合も原稿用紙の体裁でプリントアウトしてください。
原稿用紙の使い方は、前回教えてもらったようにして、必ず縦書きでお願いします。

課題の例として、長新太の『ぼくはイスです』(亜紀書房)を読み聞かせてくださいました。
普段は腰掛けられてばかりのイスが腰掛ける方にまわったら、えらいことになってしまったというナンセンス絵本です。



こんなふうにお話が展開させられるのは、長さんだからこそですが
皆さんもどんどん自由に書いてください、とのことでした。

昔トキワ荘に赤塚不二夫が住んでいた時、手塚治虫が「(映画でも美術でも書物でも)一流のものを見なさい。読みなさい。
でないと一流のものにはなれないよ」と言ったそうです。
自分の引き出しの中の要素を増やすためには、そういうことを心がけるようにしてください。



最後に、高科先生(文章)と荒井良二さん(絵)の絵本『おおきな おおきな さかな』(フレーベル館)は
今年中国語に訳され、来年には韓国語に訳されて、各国で発売されるというニュースを。
そして、新作『プレゼントはひとつ』も現在進行中だそうですよ。楽しみですね。

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