絵話塾だより

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2022年11月13日(土)文章たっぷりコース第4期初回の授業内容・高科正信先生

2022-11-13 19:20:06 | 文章たっぷりコース

文章たっぷりコース第4期が始まりました。

毎年少しずつ違う内容で授業を進めていくこのコース。今期は、

①先生が児童文学作家なので、その視点で子どもの本と絵本についての話を中心に

②『文章のみがき方』(辰濃和男 著・岩波新書)を教科書にして

③毎回異なる課題が出て、それぞれが書いたものを先生に提出してアドバイスを受ける

という感じで進めていくと説明がありました。

そして、見学の方も含め全員にどうして文章クラスに入ろうと思ったのかを聞いていきました。

それぞれがいろんな思いを胸にこの教室に来ていると知って、気持ちが引き締まる思いがしました。皆さんにとって充実した一年(実質8ヶ月)になりますように!

さてそれでは早速子どもの本についてのお話を。

今日のテーマは「子どもの本を開く」です。

最初は、1959年にアメリカで出版されたレオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』の読み聞かせです。

出版された当時、可愛らしい絵が一枚もないこの本は「これは絵本ではない」と批判を受け、大人や親たちからは支持されなかったのですが、子どもたちの評判は上々だったそうです。

そのうち、20歳前後の若者に読まれ始めるようになります。

ベトナム戦争で傷ついた若者たちはこの絵本に癒され、こんな風に生きたいと思ったのでした。

SNSなどなかった時代に口コミで若者たちの間にどんどん広がり、「ぼくといっしょにみどりになろう」という言葉でプロポーズすることが流行するほどだったとか。

 

『あおくんときいろちゃん』が1967年に日本で出版された時、これを読んで感銘を受けたのが田島征三です。

彼はいてもたってもいられず、新聞広告の裏に日本画の絵の具と膠で絵を描き

『しばてん』という手作りの絵本を11冊作って、友だちに配りました。

その中の一冊が今江祥智の手に渡り、1971年の出版に至ったそうです。

荒々しい絵、暗い・重い内容のこの本を、子どもたちに与えることができるのかと

迷いながらある幼稚園で読み聞かせた時、ある女の子が小さい声で「太郎ちゃんがかわいそう。わたし太郎ちゃんと結婚する!」と言い出し、それからは「私も」「私も」の大合唱になったのだそうです。

最後に、一人の男の子が「太郎ちゃんを連れていくな〜!」と言いながら先生のところに来て、絵本の中で太郎を連れていく役人が乗った馬のお尻を拳で叩いたのだとか。

そこで先生は子どもたちに、田島さんにお手紙を書くように促して

子どもたちは、次に絵を描くときは馬の上に役人の姿を描いてほしいと訴えたのでした。(叩かれるべきは、馬ではなく役人なので)

この2冊の本を読んで、絵本ってすごいなーと思った若者・長谷川集平は、『はせがわくんきらいや』(1976年すばる書房・2003年復活ドットコム)を出します。

全編モノクロ、手書き文字、関西弁で書かれたこの本は絵本の概念を変え、空前の絵本ブームが到来します。

 

もう一冊。最近先生が購入した『1まいのがようし』(長坂真護 著・あかね書房)を読み聞かせてくださいました。

美術家の長坂真護が、電子機器のゴミ拾いをして生活しているガーナの子ども達を主人公に描いた本作は、一見寓話のようですが、作者は実際に彼らをモチーフに描いたアート作品を売ったお金を現地に還元しており、経済と夢と情熱について子どもにも分かるような作品になっています。(現代風「アリとキリギリス」かも?)

子どもの本は大人が読んでもおもしろいものですが、大人の本が「生きるとは?」「死とは?」と問いかける文学なのに対し、子どもの本は「人生とは〇〇」「幸福とは△△」と問いの答えが書いてあり、(どんな人でも)この世は生きるに値すると教えてくれるものなのです。

宮崎駿も、著書の中で「この世は生きるに値するところだと伝えるのが、自分のアニメーションである」と言っています。これは高科先生自身の作品のテーマも同じ。

幸せの有様はそれぞれであるけれど、本を開けば物語の世界に入っていけ、この世は生きるに値すると思わせてくれるものが、子どもの本ではないでしょうか。

後半は、今期の教科書『文章のみがき方』を皆で交代で音読していきました。

今回は「まえがき」と「Ⅰ. 基本的なことをいくつか」から

「1. 毎日、書く」「2. 書き抜く」を見ていきました。

アスリートが筋力をつけるためにトレーニングをするように、毎日書くのは文章力をアップするのに役に立ちます。

そして、良いと思う文章を書き抜いて、ノート等に写すのは、文章をみがくのに役に立ちます。

参考資料として、鶴見俊輔の『文章心得帖』(ちくま学芸文庫)から、紋切り型の言葉をつきくずす方法が書かれた箇所のコピーをいただきました。

 

それから、森下裕美の漫画『大阪ハムレット 第5巻』(双葉社)の内容を紹介していただきました。

この第5巻に入っている「サリバン先生」は、少年と文盲のお婆さんのお話ですが、

人はどうして文字を使って自分の感情や思いを他の人に伝えるのかということを、改めて考えさせられる話になっています。

ということで、今日の課題は「私の好きな風景」についての散文を書いてください。枚数は自由、タイトルも好きにつけてください。

内容は、今好きな・昔好きだった・たまたま見かけて好きだと思った…なんでもOKです。いくつか候補を考えて、その中から選ぶのも良いでしょう。

課題は、市販の原稿用紙に手書きするか、出力する場合も400字詰めの原稿用紙のマス目に文字が入るようにして、提出してください。

縦書き原稿用紙の書き方は、2行目の4マス目くらいから題名を、

4行目の下の方に作者名を書き、本文は6行目から、最初は1マス空けて書きます。

、。「」などの役ものは1マスに入れるなどの約束があります。

約束を守って、美しい原稿を仕上げてください。提出は次回11月26日です。

よろしくお願いします。

 

 


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