ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

ちょっと野球の話 ~ 「セイフティ・スクイズ」で火がついた

2011-10-11 03:56:21 | 野球
10月10日、東京ドームでの阪神・巨人戦。

両チーム無得点で迎えた五回裏、1アウト走者一塁三塁。

打者はここまで好投を続けているピッチャーの西村。ヒッティング、もしくは、送りバントで、二塁三塁にして次の坂本に託すのが常識的な攻め方である。

ところが・・・驚いた。

西村の一塁線ギリギリの絶妙なバントに三塁ランナーの谷が反応。本塁突入で巨人が一点を先制。打者のバントを見てから三塁ランナーが動き始める「セイフティ・スクイズ」である。

これは、前進する気配のなかった一塁ブラゼルの動きをみたファインプレーだとも言える。しかし、普通に考えれば、打球の勢いをあれほど殺して、かつラインギリギリに球を転がすのは一種の偶然で、ごくまれでラッキーなことが起ったと考えるべきなのかもしれない。

この作戦の成功確率はともかく、これを命じた巨人ベンチの采配には強い危惧を感じた。

三塁ランナーは絶対に憤死させたくはない。一方で、バッターは西村だが、どうしても先制点が欲しい。「スクイズ」は憤死のリスクが伴う、ゆえに「セイフティ・スクイズ」ならどうだろう?

この発想には、リスクを背負って勝負を仕掛け、運も含めて相手を圧倒して何としても勝つのだという気迫が感じられない。

腹をくくった最終決戦においてすら、巨人ベンチは「セイフティ」という意識を捨てられないのだという雰囲気が、阪神の選手とベンチをして「こんなジャイアンツなら粉砕できる」という気持ちにさせてしまった、と思わざるを得ない。

事実、阪神は次の6回に2点を取ってすぐに逆転。さらに7回に2点、8回に2点。結局、圧倒的な阪神の攻撃に押されて、その後、巨人は一度も試合の主導権を取ることなく敗れた。

ペナントレース終盤、ましてやクライマックスシリーズへの出場権が掛かってくる試合。格下であってもバッターはデッドボールすら狙って喰らい付いてくるし、ピッチャーは強打者にギリギリのコースに投げ込んでくるだろう。

こういった心理戦争が始まっているときに、ベンチがあまりに「セイフティ」を気にして、「失敗を怖れている」という後ろ向きな態度を露呈するのは、相手に弱みを見せるのに等しい行為で、勝敗の行方には、計り知れないマイナスとなる可能性が高い。

あのとき「セイフティ・スクイズ」ではなく、憤死のリスクを取る普通の「スクイズ」が成功していたら、その後の展開が変わっていたかもしれない。

西村に「セイフティ・スクイズ」を決められて1点を失った後、すぐ次の回の阪神の先頭バッターはピッチャーの能見だったが、いきなりセイフティバントを試みたのが印象的だった。

凡退に終わってベンチに帰る能見から「こんな奴らには絶対に負けない」という強い意志を感じた。おそらく、その気持ちは阪神の選手や、巨人の選手にすら伝わっただろうと思う。

セリーグ3位争いの行方はまだまだ不透明だが、どちらが勝負に対して腰が据わっているのか、そして本気なのか、最終的にはそういった気持ちの部分で雌雄が決するのだろう。


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2 コメント

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はじめまして。 (通りすがりの松)
2011-10-11 20:22:23
わたしもこのプレーには驚きました。
が、1球前のバントがファールになったところでも谷は本塁を突いていましたし、
おっしゃるとおり二三塁での坂本勝負を狙ったところ、
打球が良いので帰還できたという話かと思います。
セーフティという点より、
あれをみすみす許した阪神のほうに強い危惧を感じます・・・。
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Unknown (アレチボルト)
2011-10-12 08:49:50
確かに、阪神はあのスクイズを阻止できなくて、かなり悔しかったと思います。谷選手は一度本塁突入を試みているのだから、対策を取らなかったのは、守備のミスと言えるかも知れません。

一 方、巨人からみると、あのプレーは非常に危険な賭けで、打球の行方や守備陣の動きを、三塁ランナーが一瞬で適切に判断することが要求されますが、それはか なり難しい判断です。それだけのリスクを負ってまで三塁ランナーを突入させたいのであれば、普通のスクイズの方が生還の可能性が高いので、ベンチからのサ インとしては通常は行わないプレーでしょう。

ところが、どういうわけか原監督には「球が転がってから走った方が安全」という考えがあるようで、かつての「ストライク・スクイズ」と同様に、今回も「セイフティ・スクイズ」のサインを出したのだと思います。

つまり、スクイズのリスクが消えてしまう名案として「セイフティ・スクイズ」を選択した可能性が高く、リスク評価に甘さがあるという点でも、スクイズを決行するのに、スクイズに不可避なリスクを負いたくないという姿勢の点でも、良策とは言いがたい作戦です。

こういった不可思議で消極的な采配は選手の闘争心を削ぐことが多く、チームに良い影響を与えないので、巨人のベンチワークに強い危惧を感じたのですが、実際、その後阪神に一方的なリードを許す展開となり、少々残念な気分になりました。
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