ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

島根・女子大生殺人事件 ~ 可能性を考える・その2

2010-01-24 00:38:48 | 事件
<被害者はなぜ、そこに行ったのか>

遺体の損壊場所が、犯人の自宅もしくは所有する事務所・作業場で、殺人もそこで行われたとすれば、被害者はなぜ、その場所に足を踏み入れたのだろうか。

まさにこの点が、今回の事件で、もっともよく分からない部分である。乏しい目撃情報、少ない遺留品など、ショッピングセンターを出た後に何が起こったのか、手がかりがほとんどない。被害者は、まるで神隠しにでも遭ったかのように、忽然と姿を消している。

ただ、被害者が、犯人の自宅や事務所・作業場に入った時点に的を絞れば、そのときの状況は大きく二つに分けられる。

一つは、(1) 何らかの理由があって、被害者が自分の意思で、そこに入った場合。もう一つは、(2) 威嚇的あるいは暴力的な方法で、無理やり連れ込まれた場合である。

それぞれ検討してみたい。

(1) 理由があって

この場合は、被害者が、アルバイトの後に、誰かを訪問する、あるいは、誰かと会う約束があったかどうかが、考える手掛かりになる。報道によると、携帯電話やPCの履歴からは、バイトの前に、そういう約束をしていた形跡は見つかっていないようだ。

また、警察は、被害者の手帳やカレンダーも調べているはずで、10月26日の欄に、何かの予定が書き込まれていたという話も、聞こえてこない。さらに、バイトが終わった後に、被害者が携帯電話を使った形跡もないと言われている。

何かの口約束があって、明日、明後日のことなので、メモに残さなかった可能性はある。また、見つかっていない携帯電話に、その約束が書かれていた可能性もある。

ただ、約束があったとしても、月曜日の夜9時以降に、誰かとどこかで落ち合う、もしくは、直接その人物の家か職場を訪れるのに、直前の確認電話をしないというのは、相手が親しい友人であっても、ちょっと考え難いシチュエーションだ。

唯一考えられるのは、ショッピングセンターの真ん前で、待ち合わせをする場合である。確認電話を入れるより、そこに行った方が早い場合だ。しかし、近い時刻にショッピングセンターを出た従業員で、被害者が誰かを待っている、あるいは、誰かと話している場面を見たひとはいないようである。

やはり、被害者が、事前の約束に従って、自ら意図して誰かと会った可能性は、低いと考える方が自然だろう。

では、被害者が「ショッピングセンターを出た後、偶然、誰かと出合って、急遽、相手の家に行くことになった」可能性はどうだろう。例えば、被害者は、帰宅途中に、車に乗った顔見知りと遭遇して、寮まで送って貰うことになったが、車内で話をするうちに、その人物の自宅に行くことになった、というようなケースである。

この場合は、事前の約束がないので、被害者のメモや履歴を調べても、何も出てこないし、ショッピングセンターを出た後、電話を使った形跡がなくとも不自然ではない。

だだ、被害者は、相手の自宅もしくは事務所・作業場へ、夜の遅い時刻に一人で行く、という決断を短時間でしたことになる。被害者は若い女性なので、その人物が男である可能性は、極めて低いだろう。そして、犯人が女であるならば、喧嘩の末に被害者を殺してしまうことはあっても、遺体をここまで激しく損壊するとは思えない。

確かに、1994年福岡で38歳の女性美容師が、30歳の同僚美容師を殺害して、バラバラにした事件では、遺体は激しく損壊されていた。この事件は、犯人が女であっても、凄惨なバラバラ事件を引き起し得ることを示している。しかし、福岡の事件は、仕事上での嫉妬や自分の愛人をめぐる邪推といった、強い怨恨感情が犯行の動機で、犯人が被害者の悪口を言いふらすなど、事件の前からトラブルが顕在化している。

一方、今回の事件では、そういった強い怨恨など、人間関係上の深刻なトラブルは、被害者の周りから見つかっていない。従って、「顔見知りと偶然会って、急遽行くことになった」というケースも、可能性は低いということになる。

(2) 強制的に

すると、被害者は、無理やり連れ込まれたという (2) の可能性が高くなる。この事件では、無言電話がかかってきたなど、身代金要求を思わせる出来事は起こっていないので、営利誘拐の可能性はほとんどなく、わいせつ目的の拉致としか考えられない。そうであれば、被害者が拉致された状況に関して、三つほどのケースを想定することが出来る。

それぞれについて、検討したい。

(a) 送り狼

まず、一つ目は、(a)「被害者は、帰宅途中に、偶然、車に乗った知り合いと出会い、寮まで送って貰うことになったが、その人物にそのまま拉致されて、家に連れ込まれた」ケース。

この説では、被害者のバッグなどが、犯人の車にあるので、遺留品がほとんど発見されない事実と符合する。ただ、犯人が顔見知りである場合は、被害者は恐怖以上に、怒りの感情を持つ可能性が高く、大人しく従うとは思えない。激しく抵抗する相手を脅しながら、自宅まで運転し、さらに、車から降ろして家に連れ込むのは、並大抵のことではない。

だからこそ、この手の送り狼というのは、自分の家まで連れて行くよりは、暗がりに車を止めて襲うことが多い。殺人が起こるとすれば、むしろ、車を止めた場所であって、激しく抵抗する相手を、かっとなって殺してしまったという方が現実的だ。

そうであれば、犯人は、遺体をその場所に遺棄するか、あるいは、そのまま車で運んで、人目につきにくい場所に遺棄するだろう。犯人が、遺体をわざわざ自宅に持ち帰って損壊するというのは、過去の例から見ても、可能性は極めて低い。遺体そのものへの強い執着があれば、話は違ってくるが、送り狼が目的だった人間である。遺体を消し去って、証拠や殺人自体を隠滅したいと一瞬思っても、本当に実行するとは思えない。

(a) の説は、「家に連れ込む」ことを、送り狼が考えるか、また、それは可能なのかという部分に疑問符が付く。「暗がりで車を止めて、わいせつ目的で襲ったが、抵抗されて殺害、証拠隠滅のために遺体を自宅に移動して損壊」という修正を加えたとしても、同じ疑問が付いてまわる。

(つづく)

<関連ブログ>
島根・女子大生殺人事件 ~ 過去のバラバラ事件を調べると
島根・女子大生殺人事件 ~ 可能性を考える・その1
島根・女子大生殺人事件 ~ 可能性を考える・その2
島根・女子大生殺人事件 ~ 可能性を考える・その3
島根・女子大生殺人事件 ~ 公式プロファイリングが意味するもの


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