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馬廠長日記(宮﨑市定全集22)を読みながら考えた。

2022-12-29 11:26:44 | 日記

馬廠長日記(宮﨑市定全集22)を読みながら考えた。

 昭和7年2月24日から5月16日までの3か月ほどの日記である。この間市定さんは軍隊に応召されて上海などへ赴いた。病気になった馬を管理する仕事だそうで60人ほどの人間を統べる仕事のようで階級は書いておられないが軍刀を買って持っていたそうだから将校であったのだろう。そう言えば孫悟空の与えられた仕事も馬の世話だったがこちらの方は途中で腹を立ててやめてしまった。当時の軍隊のことだからもちろん市定さんは最後までお仕事をなさっている。

 しかし当時第三高等学校か京都大学かは書いてないが教授をいきなり応召して馬の世話とは勿体ない人間の使い方をするもんだ。当時の軍隊が頭数を揃えることに固執した頭の固い組織であったことを物語るような話である。今の世の中でも企業同士の争いは、その運営の巧拙を競うようなものでその巧拙は働くヒトの才能ややる気をどう引き出すかにかかっている。こんなヒトの使い方をしている組織には勝ち目はないであろう。

 しかも日記によれば、今日はどこそこへ連絡に行って歩く距離が長くてというような話が一杯である。嫌味や皮肉を書かなかったのはさすがである。わたしならついつい書いてしまって、それが見つかりえらい目に合うかもしれないところである。

 さて、淡々とした日記を読みながら私は自分の小学校や中学校のことを思い出した。どうでもいいようなまたは無駄としか思えないような指示や命令がつぎつぎ出されるがとりあえずそれをこなしていれば、安全安心な生活である。創意工夫はしてはいけないし反抗したりしてもいけないがその場を取り繕っておけば、なんとかやっていける。この生活と全く同じ生活がこの日記に書かれている生活である。それもそのはず、当時の小中には軍隊から戻ってきたヒトが先生の中にたくさんいた。

 ただわたしの小さいころの会社も役所も、この軍隊を手本にして運営されているようなところがあって効率より指示を守ることが仕事みたいなところがあった。だからこんな教育でも間に合ったと考えられる。しかし、今は会社も役所も様変わりだし自営でやって行こうという人も激増している。こんな教育ではいけないはずである。そのいけないことを今の教育は力こぶをいれてやっているような気がする。

 この日記を読んで、たった二十年三十年のことだけど世の中の変化の大きさに驚くところがある。いい悪いは別にして。



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