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東日本のヒトのための奈良市観光案内⑧ 春日大社

2024-08-16 11:47:43 | 日記

東日本のヒトのための奈良市観光案内⑧ 春日大社

猿沢池から山の方へ行くと春日大社の鳥居がある。私の小さいころの家は、この神社からは結構離れていたのであるがそれでも大みそかの夜は、砂利道を歩く人の足音とお賽銭の箱に入る音とが聞こえた。私は覚えがもちろんないが春日大社でお宮参りをしたという話であるが、遺憾ながら初詣に春日大社に行った思い出はない。一つには近くの神様はありがたくないという思いがあったためとみられる。もう一つには立派な神社に「今年も儲けさせてください」とはお願いしづらかったのだと思う。電車に乗って生駒の聖天さんというところへ行った。ここはインドのヒンズー教の影響を受けたと思しき神様になるのか仏様になるのかの像があるから、気楽に何でもお願いできる。一方の春日大社は格式の高い神社とされていて参拝するのにちょっと緊張する。

神社はこんもりした御蓋山をご神体にしている。阿倍仲麻呂のうたでは三笠山と書かれているし通常そう書くけど正式には御蓋山の方だろう。(三笠と書くと三重になっている印象があるがどう見ても一重である。)一切人が入ってはいけない山である。鎌倉にも一切人が入ってはいけない山があるのだそうである。どうも大仏とヒトの入ってはいけない山とは深い関係があるのかと思ってしまう。または、数十年の間だけ日本の中心でその間権力闘争の激しかった地には、そういう山ができるのかとも考えられる。奈良と鎌倉は何かと似たところがありそうである。わたしの小さい時の勉強部屋からは御蓋山が見えた。こんもりと木が茂っていて他の山より真っ暗であった。山に不思議なオーラを感じたことがある。

参道に灯籠がたくさんあってだれが寄進したのかを見ていくと楽しいかもしれない。灯がともると風情があっていいと思うが、今はどうか知らないが昔は灯が入らなかった。このあたりは昼間も蝉の声とかが聞こえるなら良いかもしれないが、どうしても早朝夕方とか夜とかが良いように思う。参道の途中に宝物館がある。意外にも武将と仲が良かったみたいで、寄進された鎧兜が収められていた。当たり前だが仏像はない。観光という意味でなら時間の都合で省略してもいいかもしれない。自然を味わうことができるという場所である。

ただし3月だか4月だかの藤の花の咲くころはぜひ足を運ばれることをお勧めする。そこは藤原氏である、手入れされた藤棚が見れる。「いい色だな」とも思うし、「藤は寄生して花を咲かせるところをみると、藤原不比等はこれから自分たちは寄生することを宣言したのか。」とも思ってしまう。藤原氏の子孫たちはこの藤棚を見て、「絶対独り立ちしてはならない、このようにして政権運営するぞ」と決意を固めたものと見える。この藤棚と自分の家の屋号を見れば決意は自然と固まろうというものである。このように長い長い間、子孫にお家繁栄の方針を徹底したのであるから不比等は実に偉い人である。われわれは、一代下の我が子にさえ方針を伝えることもできない。