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あの夏、いちばん静かな海。
1991
北野武


何のギミックもない青春映画。
やはり、ラストシーンのためだけの映画。

多分、青春というのは本人にとっては、終始ブッチョー面の真木蔵人がこの映画で表現していること。
突然、それまで何も感じなかったことに炎のように取り憑かれ、誰の迷惑も顧みず突き進み、周りからは滑稽に思われ、誰かに影響を与え、身近な人にもの凄い迷惑をかけ、それでも自分だけの満足を追いかける。それができなくなったな、と思ったときに青春は終わる。
フリッパーズ・ギターの曲「青春はいちどだけ」からも感じることですが、自分だけに見える風景が見えるのが青春なんだな。それに対して誰も答えてくれないし、自分のやっていることに対して明文化された答えなんて求めてもない。

多分、北野武の「こういうのがやりたい」だけで突き進んで、脚本段階ではまだ制作サイドは疑心暗鬼。「コレ、ホントに面白いのか?」という感じだったと思います。
このとき、これが映画として成立して、意外なほど揺さぶられる映画になるということが見えたプロデューサー、凄いです。名前先行だったのかも知れませんが、それはそれで結果オーライ。

意外なほど北野監督の毎度の突き放しっぷりが少なかった。やたら優しい。気持ち悪いくらいに。

ただ、久石譲のサントラの幅が無いことが惜しい。殆どナウシカの時の音。
でも、久石譲だと知らなかったとしても必ず「ナウシカの人だ」ということが一発で分かるというオリジナルな感じが出せると言うことは凄いことだと思います。小山田のハーモニクスだけで小山田だと分かるのと同じくらいの職人芸。坂本龍一は3回くらい聞くとなんとなくそう思う。山下達郎はもうポップ仙人。日本人でイントロで分かる人ってあと誰がいるかしら。

オリジナルってそれほどたいそうな事じゃないと思っていたけれど、やっぱりそれを持っていることは凄いことだな。突き詰めすぎ。

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