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映画【クロウ/飛翔伝説(THE CROW)】

2008-06-18 22:56:09 | 映画
 
 
クロウ/飛翔伝説(THE CROW)
1994
アレックス・プロヤス(Alex Proyas)


ブルース・リーのご子息であるブランドン・リー主演の本作。
本作の撮影中に不慮の事故で亡くなったことは誠に残念です。
取り切れなかったシーンは合成したとのこと。

荒廃した街の中で愛し合う二人。
突然のチンピラの訪問。
恋人を強姦され、その後恋人共々殺された救いようのない最後を迎えた主人公エリック。
その後、カラスに不死身の身体を与えられ蘇り、正体がばれないように白塗りのピエロのメイクをして次々と復讐を遂げていく。
痛快なアクション映画の様にいくらでも作れるはずなのに、悲しい話です。
いくら復讐を重ねても恋人は戻らないという想い。

問答無用に復讐し続けることと、恋人への想いが入り交じる。しかし、復讐を続ける。
自分の魂の浄化のためではなく、純粋に制裁のために殺し続ける。
ストイックです。
下手な言い訳は全くなし。

シリーズ化されているようですが、多分、本作だけで十分だな。
1作目ということもあり、作りとしては凄く安いんですが、それがチープとして映らない。
ちなみに、本作を心のナンバーワンとする知人がいます。
私はそこまでずっぽりではありませんが、これは好き。

ブランドン・リーの演技の憑依の仕方が尋常じゃありません。
苦悩にまみれたヒーロー。
決して彼自身には救いはない。
けれど、これぞヒーローに間違いありません。

いかにも90年代初頭の香りがプンプンするオルタナなのかパンクなのかメタルなのかよくわからないサントラも好き。
たまにこういう『ザシュッ!ザシュッ!』というギターの音が聞きたくなることも。

The crow

映画【ハートブルー(POINT BREAK)】

2008-06-16 00:59:54 | 映画


ハートブルー(POINT BREAK) アドバンスト・コレクターズ・エディション
1991
キャスリン・ビグロー(Kathryn Bigelow)


もちろん、「HOT FUZZ」の為に見返した本作。
本作を観ずして「HOT FUZZ」は楽しめないと言っても過言ではないほどのオマージュっぷり。

けれども、そういうネタ的な見方をせずとも、面白い。
サーフィンと刑事物(潜入捜査官)という一見相容れないモチーフも「男の世界」というテーマの力業かすんなり染みこみます。
ちなみに、同じく潜入捜査官モノのタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」は1992年。同じ時代であってもオタクが撮ると随分違うものです。
本作と近い温度でやっているのが名作「インファナル・アフェア」ですね。こちらも随分と男前、だけど刹那。時代背景、というかお国柄なんでしょうか。突き抜けきって骨しか無い様な映画はやっぱり米国の国民性なんでしょうか。

本作をして名作とは言いがたいものの、意外なほどに時が経っても観られるというのは結局こういう世界に憧れているからなんでしょうね。
「言葉はいらねぇ、お前が何を感じるかだ」と言わんとする映画、しかし監督は女性。これはむしろ女性(キャスリン監督だけかもしれませんが)の望む男像なのでは。
「本当に自分が感じるモノはルールで縛られるモノじゃねぇんだよ」と言わんとする展開。男気溢れる映画です。

小手先でグダグダやってる映画ばっかりで、こういうディテールで勝負しない大味でありつつ何かの真理があるように思わせる映画が最近少ないように思われるのですが如何でしょうか。

映画【オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)】

2008-06-10 23:43:25 | 映画
 
 
オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)
1939
ヴィクター・フレミング(Victor Fleming)


ルビーでできた靴のかかとを三度打ち合わせれば、たちまちあなたの望みの場所へ。
コレは何の比喩なのかなぁ、としばらく考えて結局結論出ず。

帰る家があるホームドラマと観るか、成長物語と観るか。
どちらかと言えばホームドラマですね。
少女の成長物語の名作、宮崎駿監督の「魔女の宅急便」とラストが全く違うというのが印象深い。
今更本作を観ているんですが、セットのチャチさとか、衣装どうなの?とか、実際ドロシー老けすぎじゃねぇの?とかおいといて、本作の本質は多分映画になることで薄れている気がします。
映像にならないことを想像するために書かれた本だったのでは。今となっては、の発想ですが。


夜に家に帰るのが当然で、外泊は御法度の時代的なものがあるのかもしれませんが、それにしても牧歌的すぎる。
著者のライマン・フランク・ボームが「ただ今日の子ども達を喜ばせるために書いた」と語っているとおりなんでしょう。深読みいらず。
この本で楽しみたい。

お伽噺にツッコミを入れるほど愚かなことはありませんが、例えば老齢の御仁が孫に見せるには、あまりにも時代が変わってしまった。
もしくは甘やかせっぷりの比喩としては通じるかもしれません。その感性があれば、のはなしですが。
プチ家出をして世に揉まれている気になっている少女達には逆効果ですね。
用意された経験を経て、成長した気になって家に帰る子ども達にどうぞ。

映画【木曜組曲】

2008-06-08 10:45:24 | 映画
 
 
木曜組曲
2001
篠原哲雄


木曜日は大人の時間。
とかジャケ裏に書いてありましたが、そういう映画なんでしょうか?

ある売れっ子女流作家の死を巡る女5人(4人は親族で全員何らかの作家、1人は死んだ作家の担当編集)の駆け引きの映画です。
毎年恒例の食事会の最中に死んだ売れっ子女流作家。彼女死の真相は?
ほぼ1シチュエーションのサスペンス(?)。
そこで描かれるのは、女同士の駆け引きが全てです。

この映画が優れている理由は、そこに漂う女同士で無ければ生まれないであろう駆け引きの空気。
一見仲の良さそうな5人の女性たち、しかし、お互いに含むところはあり、それを正直には言えない間柄。たとえそれが姉妹であったとしてもプライドが顔を覗かせ彼女たちの間に薄いヴェールをかけてしまう。
この描き方は絶妙です。
サスガは篠原哲雄監督。日本の誇るプログラムピクチャーの雄。

私は3人姉弟で、姉二人がいる家庭で育ったので、その距離感というか、その言で歯に着せた衣の感覚がもの凄くよくわかります。
ある一定の歳を超えると本音で語り合うのは希となり、言葉の端から推して知るべしという駆け引きが生まれるモノです。もしくは、知らぬが仏、という実際に言葉になったことしか事実として認めないという頑なな姿勢。
まぁ、私の場合はその場にいるのがいたたまれなくなり、すぐに身を隠すんですが。

年にそう何回もない会合を事を荒立てずになんとかとりなそうとする本作の女性たちの各々の言動。
それがたまに実家で顔をつきあわせる姉たちの言動と非常に近い。
テーマがどんなに重苦しく、例えば本作のように人の死ということであったとしても、むしろテーマが重くなればなるほどしっかりと客観視することが美徳であるという女性の目線。それがとてもリアルに描かれています。

『彼女たちにとってはそれが美徳なのだなぁ』という客観視する目線を貫いた篠原哲雄監督の視点が素晴らしい作品です。

映画【食人族(CANNIBAL HOLOCAUST)】

2008-06-05 01:35:37 | 映画
 
 
食人族(CANNIBAL HOLOCAUST)
1981
ルッジェロ・デオダート(Ruggero Deodato)


ブレアウィッチのオリジナル、もしくは川口浩探検隊(水曜スペシャル)の元ネタとも言える本作。
本作を以て「これは実話なのか?」という牧歌的な時代が偲ばれます。

水曜スペシャルは欠かさず観ていました。
当時、ビデオで録画するという習慣がなかったため、網膜に焼き付けるかのようにテレビ画面を凝視。一瞬たりとも決定的瞬間を逃すまいと構えていました。しかし、ラストは毎度の発見ならず。もしくは隊員の負傷による無念の帰還。
「いい加減にしろよ」という発想は不思議と無く「次こそは!」と、まるで隊員の一人であるかのように意気込む小学生。
あの時の想いは一体ドコにいってしまったのか。
映画を観れば狙いがバレバレな割りに憤り、テレビを観れば芸の無い芸人に辟易し、ニュースには既にジャーナリズムは無いと嘆く。
そんな30代に誰がした。

映画【ナンバー23(THE NUMBER 23)】

2008-06-04 23:11:39 | 映画
 
 
ナンバー23(THE NUMBER 23)
2007
ジョエル・シューマカー(Joel Schumacher)


ハズレ。

もっともらしい歴史上の事例を挙げまくって「23」につなげるの過と思いきや、それほどでもないエピソード群。
ただの強迫観念といういか、ノイローゼの人のお話でした。
でっち上げでも良いからネタになるようなエピソードを入れ込んで欲しかったところです。


「ダヴィンチ・コード」もどうしようもない映画でしたが、わりと近いタイプ。
壮大な謎解きモノを期待して観るのはオススメできません。

ジム・キャリーがどうとか言うまでもないクソ脚本。
エピソードのショボさは脚本というか、リサーチ不足。
そこ、めんどくさがっちゃダメでしょう。
もっと掘ればいくらでも出てくると思うんですが。
まぁ、2と3を使えば二桁のどんな数字でも割り切れますわ。そこにこじつけの計算持ち込んだらダメでしょう。
「13日の金曜日」クラスの押しつけがましさが欲しかったところ。

短尺なのでサクッと観られますが、これを観るくらいなら他にいくらでも良い作品があるので、先ずリストから外してください。

映画【ヒューマンネイチュア(HUMAN NATURE)】

2008-05-30 01:26:39 | 映画


ヒューマン・ネイチュア(HUMAN NATURE)
2001
ミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)


コメディと言うよりもパロディ、パロディと言うよりもオマージュ、オマージュどころかコメディという作品。

脚本は病的とも言える伏線回収師であり、構造至上主義のチャーリー・カウフマンです。
監督は不治の中2病患者ミシェル・ゴンドリー
スパイク・ジョーンズ監督じゃなくて良かった。プロデューサーとして参加しています。

多毛症に悩む女性、野性で育った男、文明にスポイルされた男と女が、がっぷり四つに組んだお話。各々のパーソナリティの根幹でぶつかり合うドラマです。
コメディ全開なジャケ裏のテキストだったりしますが、そこはチャーリー・カウフマン。それだけで終わるわけがありません。
大筋としては「正直であると言うことはどういうことだ」というところに帰結していると思います。
結構ハードコア。
テーマは結構アレン監督がやっていることと共通。ニューヨークの図書館とか美術館とかカフェとかテレビスタジオなんかを行ったり来たりする痴話喧嘩映画と同じ構造。


本作を観て思い出したのが、多分、小学生くらいの時に先生に聞いたかテレビで聞いた件。
『あるテレビのドキュメンタリー取材班がアフリカに取材に訪れた。その時に取材の対象となった少年に先払いのギャラの代わりに靴をあげた。それまで彼は裸足で生活していた。クルーは「アフリカの少年」らしさを演出するために「撮影中は靴を脱いでくれ」とお願いしたのだが、少年は一度手にした靴を決して脱がなかった。』
結局こういうことで、一度快適なものを手に入れたらそうそう手放せません。
しかし、本作で語られている「言葉」と「文明」に於いて言うと、それをして快適と言うのか。
人に自分の考えを伝えることや何かを理解するということは結局ただの「ふるまい」でしかないのか。
本作のパフ(野性で育った後人間に文明を叩き込まれた男)を観ているとそんな気になります。

で、「言葉」を「情報」もしくは「便利なもの」とすると、現在は既に飽和してしてまっている。
飽和してしまったものであったとしても何らかの付加価値をつけて発信するのがメディアであるのですが、その付加価値は結局受ける側が感じることであって、発信側(メディア)が創り出すことが出来るものじゃないんですね。
そうすると、創る側の私たちは何を送り出せば良いのかというよりも、どう送り出すかということになってしまいます。これは広告の考え方ですね。
けれど感情というのは結局明文化できないもので、受け手によって千差万別(超文字通り)なのです。「ものを買う」と言うのも一つの感情からのアクションであって、AIDMA(Attention、Interest、Desire、Memory、Actionという古からの広告業界に於ける脳内購買システムの考え方)を持ち出すまでもありません。最近だとブログとか読んでてInterestが働き、SearchしてActionなんてこともよくあります。で、何で買ったのか後から考えてもよくわからない。理由が後からわからない買い物が増えた。
しかし、「芸」によるDesireは割とちゃんとした「~だからコレが欲しかったんだ」ということが残ることもある。
そこに到達できない「芸」は結局消費されるだけでテレビと同じように3秒経ったら忘れてしまう。

っつうか、何からのProblemを解決するためのSolutionとしての役割を映画に求めてんじゃねぇよ、という広告のロジックを映画にくっつけて売るやり方が嫌いだということを言いたかっただけです。詳しくはこないだの「ノーカントリー」の回をどうぞ。
※本作への批判では決してありません。

映画【ニュースの天才(SHATTERED GLASS)】

2008-05-29 01:07:45 | 映画
 
 
ニュースの天才(SHATTERED GLASS)
2003
ビリー・レイ(Billy Ray)


完全に期待はずれ。
捏造で社会を操る愉快犯的ライターの話でもなく、捏造記事を追求した社会派作品でもなく。
ただの20代中盤の若者がモンモンとしたわだかまりから良識ある社会派雑誌のライターでありながら記事を捏造する、でバレたところで無理矢理辻褄を合わせようとしてドツボにはまる。そんな映画です。

売り方間違ってるんじゃないかなぁ。
ツタヤでは「シリアスドラマ」のコーナーだし、「ニュースの天才」なんてタイトルからすると、やっぱり痛快な「Catch me if you can」みたいな世紀の愉快犯のお話を想像してしまう。
むしろ本作は遅咲きの反抗期を迎えた未成熟大人の物語で「卒業」あたりと近いのでは。のでツタヤ的には「青春」コーナーにあったほうが合点がいきます。

実話を元にした映画で、その実話中にある要素はもの凄く面白いんですが、どうしてこんなイチ青年の葛藤というコンパクトな話にしてしまったのか。
もっとエンターテイメントに特化した面白い映画になるはずなのに。
下手な社会派作品が好きなトム・クルーズがプロデューサーということも一因なのか。
もしくは、草の根からはい上がる青年のお話というインディペンデントっぽい切り口でやった方が面白かっただろうなぁ。

映画【2010年(2010)】

2008-05-28 01:27:05 | 映画
 
 
2010
1984
ピーター・ハイアムズ(Peter Hyams)


映画史のみならず全世界的な歴史に残る傑作「2001年宇宙の旅」の続編を撮るという無理難題をやり遂げたハイアムズ監督の男気みなぎる本作。

本作は「2001年宇宙の旅」の続編としては16年の年月を考えるまでもなくあまりにもチープなんですが、むしろそれは捨てて別の角度で描かれています。
映像美や哲学ではなく「宇宙で困ったことがあったらきっと人間はこんな行動をするだろう」というの「アポロ13」みたいな映画。SFアクション映画としての側面が強く、人間同士の衝突がメイン。
とは言ってもHAL9000を正面から撮ったときのレンズフレアは無いでしょ。そこにレンズフレアがあったらHAL9000のキャラクターが無くなってしまって、ただの機械になってしまう。
それが狙いか。

中学生くらいの頃に「2001年宇宙の旅」の続編として「2010」を観たときは、実は「こっちの方が好きだなぁ」とか思ってました。分かりやすいもの。しかし、あれから十何年間、二度と観ることはありませんでしたが。
比べることが無意味ですね。
「2001年宇宙の旅」は、誰かがモノリスに仕掛けた謎に導かれるようにじわじわとその深みに連れて行ってくれる作品ですね。

しかし、恐れることなく(とはいえプレッシャーは恐ろしいものだったでしょう)撮ったハイアムズ監督の心意気たるや。

映画【うつしみ】

2008-05-27 00:16:24 | 映画
 
 
うつしみ
2000
園子温

インディペンデント劇映画とそのメイキング(稽古)とドキュメンタリーとが入り交じる「アレ?メイキング再生しちゃったかな?」と我が目を疑う作品です。

とはいえ、モチーフが「走り続ける体」に一貫しています。
愛知県の美術館企画でテーマが「身体」という意外に縛りが一切無いというもの。

正直、本作を映画としてはあまりオススメ出来ませんが、思うところは少なからずある映画です。
本筋(?)は走り続けることが大好きな少女と、それに翻弄される男(おでん屋)の二人の話。
そしてドキュメンタリー(兼メイキング)としてインサートで登場するのは荒木経惟・荒川真一郎・麿赤児という、その筋では超一流の方々。生き様と言っては言い過ぎかもしれませんが、それを垣間見させる映像。

話はズレますが、最近漫画の「F(エフ)」を読み返していて、その劇中の赤木軍馬の台詞。チームメイトの死を目の当たりにし、火に対して恐怖を抱いていた軍馬。しかしそれを克服した軍馬の台詞。
「瞬間を全力で生きることが恐怖を忘れさせてくれる」
ビビっているのは結果が怖いだけで、それだけ暇なんだったら今真面目にやれよ、ということなんですが。
ちょっと余裕が出てくるとそれに慣れてしまって結果を出す前にあーだこーだ屁理屈をこねくりまわす様になるもんです。私もそうなんですが。