goo blog サービス終了のお知らせ 

神が宿るところ

古社寺、磐座、不思議・パワースポット、古代史など極私的な興味の対象を見に行く

御腰掛石(茨城県ひたちなか市)

2025-06-14 23:32:13 | 名石・奇岩・怪岩

御腰掛石(おこしかけいし)。
場所:茨城県ひたちなか市和田町3-1-27。「海洋高校」正門前。駐車場なし。

天満宮(てんまんぐう)。通称:那珂湊天満宮。
場所:茨城県ひたちなか市湊中央1-2-1。茨城県道6号線(水戸那珂湊線)・同108号線(那珂湊大洗線)「湊本町」交差点の北西、約100mの信号機がある交差点を左折(南西へ)、約170mで右折(北西へ。通称「元町通り」を進む。)、約170mで左折(南へ)、約70m進むと正面が鳥居。駐車場は右折(西へ)約160m。道路が入り組んでいて狭く、一方通行もあったりするので、わかりにくい。なお、鳥居の東側の道路から「華蔵院」(前項)駐車場に行ける(ただし、狭い道路なので注意)。
社伝によれば、鎌倉時代、海上に様々の奇瑞があったところ、湊村和田の漁師・金兵衛が海岸の岩の上に光るものを見つけると、それは十一面観世音菩薩像であった。湊村の鎮守「柏原明神」(現・「橿原神宮」(次項予定))の神託を受けると、観音像に梅鉢紋があったので、それは天神様(天満大自在天神)=菅原道真公であるとされた。そこで、時の領主が「北野山 満福寺 泉蔵院」を別当寺として創建し、この観音像を御神体として祀ったのが創祀であるとする。なお、現・岩手県宮古市の真言宗「玉王山 長根寺」旧蔵の文和5年(1356年)銘がある「大般若波羅密多経巻」に「執筆 常州吉田郡那珂湊天神別当坊住侶」とあり、少なくとも南北朝時代には当神社が存在し、東北地方とも交流があったことがわかるという。このように、創祀から長らく神仏混淆だったが、元禄年間(1688~1704年)、第2代水戸藩主・徳川光圀の寺社改革(神仏分離)により、新たに菅原道真公の神像を造らせて御神体とし、別当を「柏原明神」社守に改めた(御神体だった十一面観音像は江戸の水戸徳川家上屋敷内の「後楽園」(現・東京都文京区、「小石川後楽園」)に移された。また、「泉蔵院」は「華蔵院」(前項)門徒寺として存続したが、天保年間(1830~1844年)に廃寺となったという。)。以降、「柏原明神」とともに湊村の鎮守として、歴代藩主の崇敬が篤かった。その後、幕末の「天狗党の乱」、太平洋戦争の「日立空襲」(昭和20年)、「那珂湊大火」(昭和22年)にも被災しなかったが、昭和47年に不審火により拝殿が焼失、その後再建された(本殿は無事で、享保年間(1716~1736年)のものとされる。)。
さて、最初に御神体(観音像)が出現したという石は、「御腰掛石」として現存している。当神社の5畝(150坪=約495㎡)の飛地境内として元は現・和田町の浜辺にあったが、河川や道路の工事等により現在地に移転した。当神社の御祭礼である「湊八朔祭り」(ひたちなか市指定無形民俗文化財)は、海から御神体が現れた伝説に基づいて神輿を海に担ぎ入れるという「浜降り」儀式であり、「御腰掛石」の場所も「旧お腰掛」と称して神輿が下ろされる「御旅所」の1つとなっている。かつては浜にあり、木製鳥居も設置されていたが、「御腰掛石」自体は砂に埋もれてしまうので、祭礼の際に掘り出すのが通例だったという。漂着神(寄神)といって、海から神がやってくるという信仰は各地にあるが、なかなか面白い事例ではないだろうか。なお、一説に、旧・御神体の観音像が降臨したのは平らな磯で、その後「金兵衛磯」と呼ばれたとされ、現在の「御腰掛石」とは別のものともいう。確かに、現存のものは上が丸くなっていて、観音像を安置するには向いていないような気がする。丸い石を「魂」に見立てて祀ったものかもしれない。
蛇足:那珂湊「天満宮」の御神体は約25cm、束帯姿の木製坐像であるとされる。当然ながら、菅原道真公の像なのだが、実は徳川光圀自身の像であるとの噂があったらしい。光圀はまだ第2代藩主で、水戸藩への反感もあったので、光圀に対して敬礼させようという意図ではないか、というものである。本殿の神座扉に徳川家の葵紋が使われていることなどから、そのような風説が立ったようであるが、「天満宮」側としては、それだけ水戸藩の崇敬が篤かったということであり、墟説に過ぎない、と否定している。


写真1:「天満宮」一之鳥居、社号標


写真2:二之鳥居。境内には北側から入り、右へ曲がる。社殿は東向き(那珂湊漁港・太平洋の方向)


写真3:拝殿


写真4:本殿


写真5:境内社「出世稲荷大明神」


写真6:「旧お腰掛」の場所。「天満宮霊座石表」碑が建てられている(明治42年)。


写真7:「御腰掛石」


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 戒珠山 密厳寺 華蔵院 | トップ | 橿原神宮(茨城県ひたちなか市) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

名石・奇岩・怪岩」カテゴリの最新記事