Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(47)

2018-04-16 09:03:42 | 日記

 「僕はてっきり、あの子は世間知らずの、全くの初心初心ねんねなんだと思っていたんだ、ついさっき迄はね。彼らと話す前、その時での、今の今迄はね。」

それがこんなだったなんて…、随分な発展家だったんだ、あの子。僕、てっきり騙される所だったよ、あの子に。あいつあっちこっちで顔を売っていたんだな。僕も何日か前にあの子と一寸あったんだけど、今日のこの顔合わせであの子について話を聞けて良かったよ。これで僕の方は騙されないで済んだんだから。そう思うといい集まりだったよ、今日は。出て来てよかったんだ。彼は心此処にあらずというように、何だか呆然自失として喋るのでした。

 「それにしても、向こうの奴らの中にもあの子について何人かこの事に気付いたのがいたよ。」

顔色変えてたからな。中にははっきり怒ってる奴もいたよ。あの調子じゃぁ、これからはあの子もここいらでは今までの様には行かないな。今日、皆にバレたからなぁ、発展家だって事は皆もう知っているんだ。周知の事実という事になったんだ。今日の会合であの子の日頃の行状は明るみに出たっていう事だな。

 自業自得といえばそうだけど…。これからは相手にする奴がいなくなるなぁ、あの子。結構親切でいい子だったのに。

「そう思うと、可哀そうな気がするんだ。あの子も。」

1人で寂しくなるなぁ。彼は何だか同病相亜憐れむという感情に襲われるのでした。

 彼自身、両親が遠い土地からこの地へ移って来たので、地域の子供達からは他所者扱いされてよく1人になりました。ごく近所の子達にお情けで付き合ってもらうか、彼自身も地域の子等に必死に取り縋って交流して来たのでした。地域から外れてしまう孤独者の心理をよく知っていました。

 それにしても、今迄彼自身も知らなかった、全く気付かなかった、あの子とご近所の子供達の隠れた交流に、この時の彼はハッキリとしたショックと憤りを覚えていました。そして、その事に彼自身愕然としていました。

 「びっくりだな。子供だけじゃなく親も盆暗だと思っていたら、あの親子揃って結構しっかりしてたんだ。」

君の親戚は親子で案外なやり手なんだ。そんな点ではやはり君達の親戚だなぁ、感心するよ。でも、

「気をつけた方がいいよ、君達家族の方は。」

そう言って彼は瞳を伏せるとあれこれと熟考し始めました。今迄の彼にとっては男同士の友人のいる家の方が、何方かというと同い年の子のいる家より親しかったのでした。彼は色々な事を考え始めました。


イッツアスモールワールド

2018-04-16 08:56:09 | 日記

 「イッツアスモールワールド」です。行く度に毎回入館しました。

 船に乗り、人形達が歌う中をのんびりと船に乗って流れて行く。落ち着いた幸せな世界です。平和を好む人にはピッタリな世界です。過激な場所が無く(行っていた頃は。もう20年近く行っていません。)、子供向けですね、安心して見ている事が出来ます。


土筆(46)

2018-04-14 10:53:47 | 日記

  「さっき彼らと話したけど、君の親戚は案外皆に顔が売れていたよ。あの子の事を皆知っていたんだ。今日の地域の子供達の顔合わせや紹介の為に、この会合が無くてもあの子はここいらでうまくやって行けたみたいだった。皆あの子の事をよく知っていたんだよ。」

「しかも何回か話をした事がある奴もいてさ、その時の話もしてたな。しかもかなり親しいみたいだったよ。あの子の親がうまく取り入ったんだな、あんないい所と付き合ってるなんて、知らなかったよ。その事を君や君のお兄さんは知っているのかなと思うと、僕は如何も気になってね、彼等と話した後で聞こうと思っていたんだ。」

「如何だい、知らなかっただろう?」

 そう彼に質問されると、彼女は顔を曇らせて沈黙しました。そうした後に、

「それくらい知ってるわ。あの子、家のご近所に住んでるんだから。」

そう苦しそうに彼女は小声で言ってのけました。

 彼女のその苦しそうな様子に、彼は話し相手が嘘をついているのだと判断しました。そして、何時もの遊び仲間の誰もが彼と同い年の女の子の交友について、全くその事実を把握していなかったという事に再度驚きの色を隠す事が出来ませんでした。彼は目を丸くして穴の開く程に彼が話をしている目の前のお姉さんの顔を見詰めました。

 「君も知らなかったんだ!」「じゃあ、君のお兄さんの方は知っているかな?」知らないんじゃないかな、そう彼は言うと、話題にしている同い年の女の子に嫌悪感と不信感を持つのでした。彼は顔をしかめました。


土筆(45)

2018-04-13 09:47:37 | 日記

 「世の中には『鼻持ちならない態度』っていうものがあるって知ってるかい。」

彼は余裕が出たので少し可笑しそうな声で言うと、ふっと笑い声を漏らしました。

 そんな年下の子の態度に、彼女は内心の動揺を抑えて朗らかに、如何にも何でも無いという感じで答えました。

「悪かったわね、そんな態度で。」

「あなたと結婚する訳じゃないから、どんな態度だっていいじゃないの。」

言い終わると彼女はツンとして彼から顔を背け、再び婉然とした笑顔を取り戻して彼を見直すと、相手の事をさも小馬鹿にした様にふんと鼻で笑って見せました。

 「僕が言った訳じゃない、皆が言っているんだよ。」と、そんな彼女に彼は真顔になると、真剣味を帯びた口調で言い返しました。

「特に君のご近所の連中は本当に君の事を嫌っているみたいだね、僕も意外だったよ。」

「君は今の内に態度を改めた方がいいと思ってね、君の為にこの機会に忠告してるんだよ。」

そう言い終わると、彼の声は何時もの調子に戻り、「君、知らないみたいだから言うけど、君の親戚は結構人気があるんだよ。」そう言って、彼は先ほどの連れの男の子達が行った方向を顎でしゃくって見せました。


土筆(44)

2018-04-12 10:00:52 | 日記

 「私の手前そう言うんでしょう。」

分かっているから、気にしなくていいのよ、と笑顔で言う従姉妹。するとご近所男の子は、聞こえるんじゃ無いか?あいつ聞いているんじゃないか?と、心配そうに言うと、少々目が泳ぎました。「如何せ本人は聞こえたって分かって無いんだから、無理しなくていいのよ。」「私には正直に言って貰って構わないから。親戚だからって気にする事無いわ。」と、従姉妹はあくまでにこやかに笑っています。

 と、ご近所の子は、目の前の年上の彼女に対して何だかムカッとしたようでした。目に怒りが見えました。キッとした感じで目の前のお姉さんを睨むと、

「どっちかっていうと、あの子の手前君の方と付き合っているんだ。」

親戚なんだろう、あの子と。と言い出しました。『あの子って誰だろう?』そう考える私の目の前で、従姉妹とご近所さん、2人の間に暫く沈黙の時が流れました。

 と、行き成り

「如何いう言い方するの、この私に向かって。」

と、憤ったような従姉妹の声。この声に驚いた私が、2人の物言いや顔付きを覗いて見てみると、今迄にこやかだった従姉妹の顔は眉間に青筋が立っていました。これに対して、男の子の方は表情が緩み余裕のある笑顔に変わりました。