Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

うの華4 18

2022-01-03 12:16:48 | 日記

 この様に、この家の主婦である彼女も当然、自分の子と同年の智という子に纏わるこの話は全くの虚偽だと考えていた。

『とんだ親馬鹿だよ!。』

あの母親も何勘違いしてるんだい。彼女は呆れながらこう思うと同時に、『片腹痛いわ!』と可笑しくもあったが、子育て中の子を持つ親としてそこ迄あやかして見栄を張るのかと心中腑が煮え繰り返っていた。

    背中に壁掛け時計の時を刻む気配を感じながら、彼女は玄関入り口にちょこんと立ち尽くしてくりくりとした目を自分に向ける子供をハッシと見据えた。ふんと勢い付に鼻から息を出すと彼女は子供にさあてとと問い掛けの言葉を掛けた。

「さあて智ちゃん、今何時かな?」

そして彼女はふんと、今度は嘲りの鼻息を出した。これは無論この場にいない井戸端会議の一員に対する物だ。が、直ぐに彼女はこれは目の前の子供に対して、自分へのそれだと誤解される事だろうと気付いた。そこで彼女は、「これはお母さんにだよ。」と子供に対して一言断りを入れた。この点は、自分もやはり子を持つ母だ、どんな時にも他所の子に対して子を慈しむ礼儀を有しているのだ、また、子供という幼い存在であっても人として尊重して自分は接しているのだという彼女の恣意的な行為だった。何故ならそれが分かるのは、彼女はこの後「お母さんとは違うんだ。」という言葉を続けて口にしたからだ。その言葉内の母は、玄関の子にとっても容易に自分の母を指しての「お母さん」であると判じられた。

 子供は一瞬目を瞬き、目の前のこの家のお上の顔を見直した。この子にとっても実は常日頃、自分の母よりこの友人の母の方がより常識的であり、より母性愛という物を有している母親というものに見えていたからだ。そこでこの子は彼女を見上げていた目を一寸笑わせた。そうして内心頷いた。

『お母さんとこのおばさんは確かに違う。』

子はそう相槌を打った。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿