さて、光君の祖父母は息子の事についてお互いに忌憚のない意見を述べ合います。
光君の伯父である息子が何処であの救助法を知ったのかというと、光君の祖父である父の会誌からでした。
光君の母である娘が溺れた時、光君の祖母である母は息子が救助しようとしていた事に気付かなかったのか、
母は例の救助法を知らなかったのか、父の会誌を読んでいなかったのか、など聞かれると、祖母は答えます。
「勿論、知っていたのよ。」
祖父は妻の答えにやはりと思います。
「それならどうして」
と言葉をとぎらせます。 叩く事も無かっただろうにと言いたかった言葉を飲み込むと、
「何故叩いたりしたんだい。」
返事によっては妻についての態度も今後は考えて行こうと思います。
「知っていたから、あの子がそれを妹で試そうとしている事に腹が立ったのよ。」
「妹を溺れさせて助けるなんて、酷いじゃないの。」
だから私は腹が立ったのよ。溺れさせることまでしなくていいでしょう、妹なんだから。
わざわざ妹に苦しい思いをさせるなんて。あの子は何故浜にいた他の子から浮き輪を借りるという事をしなかったのかしら?
あの子の事だから、有無を言わせずに他の子から浮き輪ぐらいすぐに奪い取って助けに行けたはずよ。
なぜあの子は浮き輪なしで妹の所まで行ったんだと思う?
「さあねぇ。」
祖父は何だか寡黙になるのでした。
「あの子、自分が新しく知識として得た救助法を試したかったのよ。」
その為に自分の妹がどんなに苦しむかなんて考えなかったのよ。いえ、どうでもよかったんだわ。
だから私は腹が立ってあの子の事をぶったのよ。そう激高して妻が言うと、夫は沈みながら、
「お前だって、浮き輪を借りずに直ぐ2人の所へ向かったんじゃないのかい。」
お前は如何して浮き輪を借りなかったんだい。そう夫に言われて、
「私の時にはもう一刻を争うような事態に見えたから、とても周りの子に話をしている余裕が無かったのよ。」
そう妻は答えるのでした。
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