シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

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諏訪根自子はなぜ演奏会から遠ざかったのか?

2021年12月26日 | ドイツ音楽も様々
左は43年 ヴァイオリンをゲッベルスから贈られる諏訪根自子、右は「コロムビア録音全集」LP。 カラー写真は着色?
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戦前戦後 日本人ヴァイオリニストとして唯一世界で認められ、活躍していた諏訪 根自子が、60年以降 演奏会から遠ざかったのは、戦争により翻弄された人生の影響でしょうか __ と前回 書きましたが、私なりに推測してみました。 以下を読むと …
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ウィキペディアから __ 諏訪 根自子 (1920~2012) は、日本のヴァイオリニスト。 可憐な容姿であったことから国民的な人気を得て「美貌の天才少女」と一世を風靡したほか、ヨーロッパに留学してベルリン・フィルとの共演を果たすなど、国際的に活躍した。

満3歳で ロシア出身のヴァイオリニスト小野アンナの弟子、中島田鶴子に入門、1年後 その才能を認めたアンナに直接師事してヴァイオリンを習う。 1930年秋 来日したエフレム・ジンバリストに紹介されてメンデルスゾーンの協奏曲を演奏して驚嘆させ、1931年『朝日新聞』で「天才少女」として紹介される。

1932年 東京の日本青年館で初リサイタルを開き「神童」と呼ばれる。 1936年にベルギーへ留学、1938年にはパリに移って、カメンスキーに師事する。 ドイツではクナッパーツブッシュの指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と共演し、ドイツ宣伝大臣のゲッベルスからストラディヴァリウスとされるヴァイオリンを贈られる。 その後もスイスで演奏会を開くなど演奏活動を継続。

米国を経て1945年12月 帰国する。 帰国間もない時期の録音としては、NHK ラジオ第2放送『放送音楽会』(1949年11月) に出演し 東宝交響楽団 (現・東京交響楽団) との共演でブラームスの協奏曲を演奏した音源が NHK アーカイブスにて保存されている。

戦後は日本で井口基成、安川加寿子らとコンサートを開くが、1960年以後は演奏の第一線から引退する。 その後の消息はほとんど聞かれず、伝説中の人物となっていた。 1978年から1980年に録音されたバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」がキングレコードより発売された。 1990年代になって ごく少ない機会ながら私的なサロン・コンサートで演奏するようになり、1994年録音のいくつかが CD 化されて、全盛期と変わらず気品と迫力のある演奏が話題になった。

ゲッベルスから諏訪に贈られたヴァイオリンは、ストラディヴァリウスとされているが、その真贋や由来は不明である。 諏訪自身は生前のインタビューで、当該ヴァイオリンについて「盗品ではなく、ゲッベルスの部署がシレジアの仲介業者から購入した」と説明していた。 諏訪の没後の、当該ヴァイオリンの所有者であるノブキソウイチロウは、「ナチスの略奪資産研究家」であるカーラ・シャプロウの鑑定の求めに応じていない。
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戦後しばらくまで ストラディヴァリウスを所有する日本人ヴァイオリニストは諏訪以外いなかったでしょうし、自宅を売却してストラディヴァリウスを入手した辻久子が話題になった73年からが、諏訪以来の日本人とストラディヴァリウスとの関わりと認識します。

すると こういう推理が成り立ちます __
<諏訪さん 素晴らしい演奏でした><有難うございます>
<あのような素晴らしい音色はどうしたら出せるのですか?><それは幼少時から研鑽をたゆまず積んでいるからです>
<お使いになっている楽器も素晴らしいんでしょうね?><はい 名器といわれる希少なストラディヴァリウスです>
<よくそれを入手できましたね><戦時中 ドイツ政府高官の方から贈られたものです>
<というと ナチス・ドイツの …><はい 宣伝大臣の …>
<ゲッベルスからですね?><はい そうです>
<ナチス・ドイツはユダヤ人や占領国から美術品などを没収したりしたんですが、それはそうではなく …><盗品ではなく、ゲッベルスの部署がシレジアの仲介業者から購入したと聞いております>

__ 諏訪 根自子の演奏会後、こういう会話もあったのではないでしょうか。
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何やら モヤモヤとしたものが残りそうなインタビューになったと思います。 諏訪自身にとっても 嬉しいやり取りではなく、どこか “後ろめたいもの” になったのではないでしょうか。

もしかしたら 盗品だったのかも知れない。 けれど 自分で弾いていても素晴らしい音色なので、手放す気になれない。 このストラディヴァリウス以外の、以前使っていたヴァイオリンにはもう戻れない __ こうした葛藤があったのかも知れません。

すると 同じような質問を演奏会後に訊かれたくないために、演奏会から遠ざかってしまった … という推理ができるのです。 いや 別の理由があって、それで演奏会を開かなくなったとも考えられます。 本人が亡くなってしまったので、それは確かめようがありません。

「諏訪は音楽家として熟していったのに、どういう理由でか楽界から身を退く形となってしまった。 完全主義であるがゆえに、自己のヴァイオリンに何がしかの限界を感じたのかもしれない。 あるいは少女時代からいつとはなしに作られてしまった “天才・諏訪根自子、神秘的な女性” といったイメージに疲れたのだとも想像される」(音楽評論家/横溝亮一、バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ・パルティータ 解説から)

現在の楽器所有者が鑑定の求めに応じないのも、上記の私の推理を可能にしています。 いずれにしろ 名器が弾かれないままの状態に置かれているのは残念な事です。 弾かれてこそ “名器” のはずです。


手持ちのバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」CD (78~80年 SEVEN SEAS/キングレコード) を聴いてみました。 比較のため 同時期に録音されたギドン・クレメル (80年 PHILIPS) のも聴いてみると、明らかにクレメル演奏の方が輝いている印象でした。

演奏活動の第一線を退いているヴァイオリニストと、現役バリバリのヴァイオリニストとの違いがそこにあるのを感じました。
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渡欧前に残したコロムビア録音のすべてを録音日順に収録。 SP 盤をもとに丁寧にリマスタリングし、アナログのマスターテープを作り LP 化しました。 一流の技術者が過去最高の音質を目指して製作しており、30年代の音とは思えぬ美音に仕上がっております。 かつて演奏録音からここまで自然な叙情が香り立ったことがあったであろうかと自問したくなる驚きの出来栄えです。 往年の大演奏家を思わせる音運びでありながら すっと心に馴染んでくる、柔らかく、品良く、高い知性を感じさせるヴァイオリンの歌。 愛蔵盤としてぜひお手許に。 当盤の復刻は、SP 復刻で定評ある「オーパス蔵」レーベルで創業よりマスタリングを担当している須賀孝男氏の手によってなされました。 同内容の CD も同時発売いたします (品番:ALT-391/2)。 あわせてご堪能ください (冒頭 LP の説明 キングインターナショナル)。
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今日はここまでです。

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