*『リンゴが腐るまで』著者 笹子美奈子 を複数回に分け紹介します。27回目の紹介
『リンゴが腐るまで』原発30km圏からの報告-記者ノートから-
著者 笹子美奈子
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**『リンゴが腐るまで』著書の紹介
第2章 原発と生計
原発技術者
(前回からの続き)
「原発事故前は縫製関係の会社が3、4社あって、女性はそこで働いていた。でも原発事故後、休業している。共働きは職場が近くないと、子育てしながら働きに出られない。勤めはダメ、農業もダメ、米プラス年金だったら生活できるが、原発事故でそのスタイルが崩れてしまった。結果、現在この地区は若い人はゼロ。一番若い人で60歳前後。これから何をやったら生計を立てていけるのか、みんな悩んでいる状態だ」
雇用の場を奪われたうえ、農業収入も見込めない。政府に押し切られた形で避難指示解除になり、毎月10万円の精神的賠償もやがて打ち切られる。「年金生活者はよいが、今の状況で打ち切りでは困る。生活が軌道に乗るまでめんどうを見てもらわないと。原発事故がなければ生計を立てられていたのだから」。
生活の手段をどこに求めるのか。
結果、除染の仕事に従事する人が多いという。だが、「除染は勧められる仕事ではない。放射線量は原発と一緒だ。うちの会社の線量の上限は、年間15ミリシーベルトだった。政府は避難指示解除の説明会で、考えられないようなことを言った。
『普通の生活で年間20ミリシーベルトまでなら大丈夫だ』と。そんなばかなことはない。その上、緊急時の原発作業従事者の上限を年間250ミリシーベルトに引き上げた。ばかげている。勝手に基準をコロコロ変えて、本当に安全な値が知りたい」。
国が実施する除染についても、広田さんは不満を抱いている。
※「第2章 原発と生計「原発技術者」」は、次回に続く
2016/8/1(月)22:00に投稿予定です。