*『原発ゼロ』著者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。15回目の紹介
『原発ゼロ』著者小出裕章
原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。
原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。
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**『原発ゼロ』著書の紹介
「第2章 もはや東京の一部も放射線管理区域」P100~ より
放射線業務従事者でも、妊婦の内部被曝は1ミリシーベルトまで
次に、この「年間20ミリシーベルト」というのがどういう数字なのかということですが、これは、私のような放射線を取り扱いながら仕事をしている、給料をもらっている、そいういう人間でも、1年間にこれ以上放射能を浴びてはいけないと法律で定めている被曝量です。被曝というのはどんなに微量でも危険である、というのが現在の学問の到達点なのであって、「年間1ミリシーベルト」でも本来なら被曝はしないほうがいい。
でも放射線業務従事者は、給料をもらっているのだから我慢をしなさいということです。この基準を、日本の政府は給料をもらっていない一般の人たちに、それも仕事をするような限られた時間ではなく、毎日24時間居続ける日常の生活環境で適用する、非常時なのだから我慢しろ、と言っているのです。
放射線業務従事者の被曝限度は、「電離放射線障害防止規則」という法律の中で決められており、そこにはまた、次のようなことも定められています。
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第6条 事業者は、妊婦と診断された女性の放射線業務従事者の受ける線量が、妊婦と診断されたときから出産までの間(以下「妊娠中」という。)につき次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。
一 内部被曝による実効線量については、1ミリシーベルト
ニ 腹部表面に受ける等価線量については、2ミリシーベルト
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給料をもらっている人間でも、妊娠している女性は妊娠期間中に1ミリシーベルトを超えて内部被曝をしてはいけないし、おなかの表面部分だけしか被曝しない場合でも2ミリシーベルトを超えて被曝してはいけないと定めているのです。
年間1ミリシーベルトの被曝を放射線業務従事者の妊婦がしてはけないのに、被災地に住む一般の妊婦、そして子供たちはしてもいいなどということが許される道理はありません。それでも、もし20ミリシーベルトという年間被曝限度というものを妊婦や子供たちに許してもいいと思うような政治家や役人、御用学者がいるなら、まず彼らがそこに住むべきだと私は思います。
汚染された土地に人々が棄てられている以上、被曝の低減対策はもちろん必要です。でも、私はもともと除染には反対です。費用対効果を考えてもそうですし、そもそも汚染地域を除染できると言うこと自体が間違えていると思います。今、一番やらなければならないのは、汚染地域の人々を逃がす、移住させる、ということです。
被害者にとって、生まれ育った土地、住み慣れた土地を離れるのは大変つらいことだと思います。しかし、年間20ミリシーベルトという被曝限度など到底容認するわけにはいきませんし、仮に1ミリシーベルト以下としたとして、そうなるまでには、多分、何百年もかかると私は思います。故郷はもうすでに失われているのです。日本政府は、その厳しい現実を汚染地域に住む人々に知らせなければいけないと思います。
「国や行政が率先して除染をすればなんとかなる」などといつまでも宣伝して幻想をもたせるのは今すぐ止めるべきです。そして、一人あるいは家族単位でどこかに行くというのではなくて、その地域ごと、コミュニティごと移住できるような政策を、国は講じなれければいけないと思います。莫大な国費を除染ビジネスに投資してロビー勢力を増やすよりも、国庫を潤す納税者一人一人の命を守り、その生活再建にあてるほうが、よほど堅実だし、被害者に寄り添った方策であると私は思います。
※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、12/22(火)22:00に投稿予定です。