*『原発ゼロ』著者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。10回目の紹介
『原発ゼロ』著者小出裕章
原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。
原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。
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**『原発ゼロ』著書の紹介
「第2章 もはや東京の一部も放射線管理区域」P75~ より
東京でも「黒い物質」が見つかった!
放射線管理区域にしなければならない地域では、目に見えない空気や土の汚染があるだけでなく、「黒い物質」が見つかるということを、私はずいぶん前から聞いていました。それについての調査は、神戸大学の山内知也さんが素早く取り組んでくださっていて、その黒い物質が猛烈なセシウム濃度になっていること、正体が藍藻類(藍色細菌)の死骸であることを突き止めています。
そして、この黒い物質が、2012年の春頃から私のところにも届くようになりました。最初に測定を依頼されたのは東京都の東村山市と葛飾区で採取されたもので、東村山市のものが2個、葛飾区のものが4個の計6個の試料が届きました。
汚染の広がる地域というと、東北や北関東だけを思い浮かべる方も多いようですが、文部科学省や原子力規制委員会が公表している都道府県別のセシウム降下量を見ると、福島の事故があった2011年3月から6月までの合計(図10)では、東京都は測定不能とある宮城県を入れなければ4番目、入れればおそらく5番目の多さで、2013年4月から10月までの合計(表3)では、福島県、茨城県、宮城県の順に次いで4番目となっています。
この東京都で採取されたものを含め、これまで私が測定した試料を一覧にしたのが表4です。そして、測定したセシウムの濃度を示したのがその下の表5です。調べるのはセシウムの濃度ですので、この場合も測定はゲルマニウム半導体検出器を使うガンマ線スペクトロメトリで行いました。
東京の下町、葛飾区の水本公園で採取した黒い物質(東京3~6)には1キログラムあたり20万~30万ベクレル、東村山市の学校で採取したもの(東京1、2)は1キログラムあたり2万ベクレルを超えるセシウムが含まれていました。そして、同じ時期に届いた南相馬市で採取した試料には、200万~600万ベクレルものセシウムが含まれていました。さらに2013年夏には福島県内の他のエリアで採取されたものも送られてきており、強制避難区域になっていない福島市で見つかったものからも、1キログラムあたり200万ベクレルに近いセシウムが検出されました。
それで、これらが見つかった場所がどれくらいの汚染を受けているかというと、葛飾区水元公園は1平方メートルあたり4万ベクレル以上で、本来なら放射線管理区域にしなければならないところです。そして南相馬市と福島市は、1平方メートルあたり10万ベクレルを超える汚染地帯です。しかし、東村山市は放射線管理区域に指定しなければならないほどの汚染は受けていないところです。しかも、見つかったのは学校の敷地内です。
日本の法令では、1キログラムあたり1万ベクレルを超えてセシウム137、セシウム134に汚染されているものは、放射性物質です。したがって、どれも本来ならば、放射線管理区域の中で厳重に管理されなければならない物質ですが、人々が普通に生活している場に存在してしまっていたのです。何より子供たちが遊ぶ場所からは、この黒い物質を早急に撤去しなければいけません。国や行政には、こればかりは法令にしたがって対処することを望みます。
※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、12/14(月)22:00に投稿予定です。
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